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​NISAとiDeCoの違いとは?​​

初心者向けに分かりやすく解説

​公開日:2025/11/11

​将来に向けて資産形成を始めようと思いながらも、始められないでいる人も多いのではないでしょうか。投資のための制度、NISA(ニーサ)とiDeCo(イデコ)の違いや、それぞれのメリット・デメリットを知り、将来の資産形成に役立てましょう。


​NISAとiDeCo(確定拠出年金)の違い

​NISA(ニーサ)とiDeCo(イデコ)は、いずれも投資による個人の資産形成を支援するために国が定めた税制優遇制度です。NISAやiDeCoは金融商品名ではなく、制度の名称です。金融機関でNISA専用口座や、iDeCo専用口座を開設し、その口座内で資産運用を行います。


ただし、それぞれの利用目的や、取扱商品、引き出しの自由度、税制優遇の仕組みなどには明確な違いがあります。2つの制度を比較しながら、違いを確認していきましょう。


​NISA(少額投資非課税制度)

​iDeCo (個人型確定拠出年金 )

​制度の目的

​家計における安定的な資産形成

​老後に向けた資産形成

​対象年齢

​18歳以上の居住者

​20歳以上65歳未満

※条件有り

​投資上限額(年間)

​360万円

(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)

​職業などにより異なる

(年額24万円~81.6万円)

​非課税期間

​無制限

​運用期間中

​非課税保有限度額

​1,800万円

(このうち成長投資枠は1,200万円まで)

​制限なし

​引き出し条件

​いつでも引き出し可能

​原則60歳まで不可

​運用商品

​投資信託・上場株式など

​投資信託を中心に、定期預金なども含む

​所得控除

​なし

​あり

(掛金が全額所得控除の対象)

​運用利益への課税

​非課税

​非課税

​受取時の控除

​運用益に対する課税なし

​退職所得控除もしくは

公的年金等控除の対象

​年末調整・確定申告

​不要

​所得控除を受けるため必要

​手数料

​多くの金融機関で無料

​口座管理料などが必要


​NISAの場合、資金はいつでも自由に引き出せるため、余裕資金の運用、教育資金の積立、住宅購入資金などに使うことができます。一方のiDeCoは原則60歳まで資金を引き出せないため、老後に向けた資産形成が主な目的といえるでしょう。


また、税制面にも大きな違いがあります。iDeCoの場合には、掛金が全額所得控除になり、所得税・住民税の負担を軽減できます。さらに、受取時には、一時金として受け取れば退職所得控除、年金受取なら公的年金等控除が適用できます。

NISAの場合は、掛金に対する所得控除はなく、受け取り時の控除もありません。


​NISAの特徴とメリット・デメリット

​NISAを始めようと検討中の人は、特徴やメリット・デメリットを理解しておきましょう。NISAの特徴は、iDeCoよりも自由度が高いことです。つみたて投資枠と成長投資枠を合わせると、投資できる金融商品の種類が多く、引き出しの制限もありません。ただし、税制優遇のメリットは、老後資金目的に特化したiDeCoの方が大きくなります。


参考:金融庁 J-FREC「NISAを知る」    


参考:金融庁「NISAを利用する皆さまへ」


​NISAの基本

​NISA(少額投資非課税制度)は、個人の資産形成を支援するために国が導入した税制優遇制度です。


NISA口座は1人1口座に限られます。証券会社・銀行・郵便局などで開設でき、口座開設後の金融機関変更も可能です。


NISAは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠を併用できる仕組みになっており、合計で年間最大360万円、一生涯では投資元本1,800万円まで運用益非課税で投資できます。


保有期間は無期限で、つみたて投資枠では投資信託による長期的な資産形成がしやすく、成長投資枠では株式やETFなど幅広い商品が選べます。


​NISAのメリット

​NISA口座内での投資で得た配当金や売却益などは、非課税扱いになります。一般的な貯蓄や投資から得る利益からは、所得税と住民税を合わせて毎年20.315%の税金が差し引かれますが、NISA口座では運用中は非課税扱いとなるため、効率的に運用できます。さらに、NISAの場合は引き出しの制限が無く、運用期間中でも自由に出金できるため、ライフイベント資金として使いやすい点も大きなメリットです。


また、NISA口座では少額から投資ができます。最低積立金額は金融機関ごとに異なりますが、毎月100円や、毎日100円の積立ができる証券会社もあります。保有期間の制限もなく、投資初心者にとっても長期的な資産形成を目指しやすい制度です。


​NISAのデメリット

​NISAでは、積み立てた資金を株式や投資信託といった元本保証のない商品で運用するため、元本割れの可能性があります。使いたい時期が決まっている資金の運用は避け、余裕資金で運用を始めましょう。


また、NISAの場合、掛金が所得控除の対象にならないため、所得税や住民税の負担を軽減する効果はありません。使いたい時に資金を引き出せる自由度がある一方で、税制優遇のメリットはiDeCoに比べて限定されています。


NISA口座の非課税保有限度額には上限があり、投資元本の上限額は、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて1,800万円までです。さらに大きな資金を運用するには、課税口座を利用することになります。


​iDeCoとは?特徴とメリット・デメリット

​iDeCoは公的年金を補完する私的年金制度で、税制優遇を受けながら老後資金を積み立てられる仕組みです。掛金が全額所得控除になるなど税制上のメリットがありますが、原則60歳まで引き出せないなど、いくつかの注意点もあります。


​iDeCoの基本

​iDeCoは、老後に向けた資産形成を行うための私的年金制度です。拠出時には掛金が全額所得控除になり、運用益は非課税、受け取り時には退職所得控除や公的年金控除が利用できるなど、税制上の特徴があります。


ただし、働き方に応じて掛金の上限が定められており、原則として60歳まで資金を引き出すことはできません。また、運用商品は金融機関ごとに異なり、加入時・拠出期間中・受取時には所定の手数料がかかります。


iDeCoは税制上のメリットが多い反面、制限も多いため、制度の特性を正しく理解し、自身のライフプランに合うかどうかを見極めたうえで利用しましょう。


参考:iDeCo公式サイト iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受け取り方法等


​iDeCoのメリット

​iDeCoの魅力は、拠出・運用・受取の各段階で税制優遇を受けられる点です。


拠出時には、掛金が全額所得控除になります。課税所得を圧縮できるため、所得税や住民税の負担が軽減されます。


運用期間中は運用益が非課税扱いとなり、効率的な複利運用が可能です。


60歳以降は一時金、年金、またはその組み合わせから受け取り方法を選べます。一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除の対象となり、ここでも税制メリットを享受できます。


参考:iDeCo公式サイト iDeCoのメリット


​iDeCoのデメリット

​iDeCoは長期的な資産形成に適した制度ですが、いくつかの制限や注意点があります。


iDeCoは老後に向けた私的年金制度のため、原則として60歳になるまで資金を引き出せません。積み立て途中で家計が急変したり、ライフイベントでまとまった資金が必要になったりしても、iDeCo口座内の資金は使えないため注意が必要です。


また、掛け金には上限額があり、いくらでも自由に拠出できるわけではありません。


また、iDeCoの運用商品には元本確保型の商品もありますが、投資信託を選んだ場合は元本割れのリスクがある点にも注意が必要です。


さらに、受け取りについても制限があります。受取開始は60歳から75歳までの間で選択する必要があります。加えて、年金形式で受け取る場合、受け取り期間は5年以上20年以下で設定しなければなりません。


参考:iDeCo公式サイト iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受け取り方法等


​NISAが向いている人

​NISAは、積立金額の柔軟性や資金の引き出しやすさ、投資商品の選択肢の広さを重視する人に適した制度です。将来の備えを意識しながらも、「とりあえず少額から資産運用を始めてみたい」という人にとって、比較的ハードルが低く、使いやすい仕組みといえるでしょう。


​柔軟に積立金額を設定したい人

​NISAでは、月100円程度の少額から投資を始められるため、ライフスタイルや収入に合わせて無理なくスタートできます。


多くの金融機関で口座管理料が無料となっており、コストを抑えながら長期的な運用が可能です。


年間の非課税投資枠は、つみたて投資枠が最大120万円、成長投資枠が最大240万円ですが、必ずしも上限まで使う必要はありません。


初心者はまず少額の積み立てから始め、収入や経験に応じて積立額や投資対象を調整していく方法が現実的です。


​自由に引き出したい人

​NISAは資金の引き出しに制限がないため、ライフイベントや急な出費にも柔軟に対応できます。教育資金や住宅購入資金、急な医療費など、必要なタイミングで資金を使えるのは大きな利点です。


一部の引き出しも可能で、残りの資産を運用し続けることもできます。


用途を限定したり、受け取り時期をあらかじめ決めたりする必要がないため、自由度の高い資産形成をしたい人に向いています。


​多くの商品から選択したい人

​NISAでは、投資商品の選択肢が豊富に用意されており、投資経験や目的に応じた運用が可能です。


つみたて投資枠では、長期・分散・積立に適した一定の基準を満たす投資信託やETFのみが対象となっており、初心者でも安心して始められます。


一方、成長投資枠では、投資信託に加え、ETFや国内外の個別株式など、より自由度の高い商品を選択できます。


まずはつみたて投資枠から少額でスタートし、投資に慣れてきたら成長投資枠を活用して選択肢を広げていくとよいでしょう。


​iDeCoが向いている人

​iDeCoは、60歳以降の受け取りを前提に長期的な積立を行う制度です。特に「引き出さずに積み立てたい人」「元本保証の商品を選択したい人」「控除を十分に活用したい人」に適しています。それぞれの理由について詳しくお伝えします。


​引き出さずに積み立てたい人

​iDeCoは、原則60歳まで資金を引き出せないため、長期の資産形成を自然に続けやすい制度です。


毎月自動的に積立が行われるため、お金があると使ってしまう人にとっては、意識せずに続けやすいという利点になるでしょう。


また、一度設定した掛金の変更は年1回までで、一部金融機関を除き原則書面による申請が必要です。iDeCoは制限が多い制度ですが、この仕組みが続けやすさにつながるともいえます。


iDeCoは、将来に向けて淡々と積み立てたい人に向いているでしょう。


​元本保証の商品を選択したい人

​iDeCoでは、預金型・保険型など元本確保型商品も選択できます。リスクを抑えながらも税制メリットを得たい人は、iDeCoで元本確保型商品を選択するとよいでしょう。


また、運用商品を一つに絞る必要はないため、値動きのある投資信託と元本保証の商品を組み合わせて持つことも可能です。受け取りが近づいたら、資産の一部を元本確保型に移すなど、段階的なリスクコントロールも検討しましょう。


​控除を十分に活用したい人

​iDeCoは、掛金が全額所得控除の対象となるため、節税効果を重視する人にとって非常に有効な制度です。


例えば、毎月2万円ずつ掛金を拠出した人の場合、年間の掛金は24万円になります。仮にこの人の所得税率が10%、住民税率が10%とした場合、年間約4万8,000円の節税ができる計算です。仮に今後30年間、このまま掛金の拠出を続けるとすると、合計144万円の税負担を軽減できます。


参考:iDeCo公式サイト「かんたん税制優遇シミュレーション」


​制度の違いを理解して、資産運用をはじめよう

​NISAとiDeCoは、税制上の優遇によって個人の資産形成を後押しする制度という点で共通していますが、その目的やメリット・デメリットには違いがあります。NISAは、いつでも資金を引き出せる柔軟さがあり、ライフイベントに応じた運用に適しています。一方、iDeCoは、老後資金に特化した制度で、長期的な積立と節税を重視する人に向いています。


それぞれの制度の特徴をよく理解し、目的やライフプランに合った活用を検討してみましょう。もし制度選びや具体的な活用方法に不安がある場合は、専門家への相談も有効な選択肢です。



■記事のライター・監修者


名前:氏家祥美(うじいえよしみ)
保有資格:AFP、2 級 FP 技能士、キャリアコンサルタント


経歴:2005年にFP会社の立ち上げに参画、2010年よりFP事務所ハートマネーの代表に。家庭科の教科書で経済パートを執筆するほか、大学の非常勤講師、企業や自治体等でリタイアメント世代向けに講師や相談を担当。幅広い年代にむけて中立な立場で金融リテラシーを普及している。


名前:田尻宏子(たじりひろこ)

保有資格:2級ファイナンシャル・ プランニング技能士、証券外務員一種


経歴:証券会社、生命保険会社、銀行など複数の金融機関での勤務経験後、2016年から主に生命保険、損害保険、株式投資、ローン、相続関連等の金融分野専門のライターとして活動中。

お金の初心者から上級者まで誰もが納得できる記事を書くのが得意。

​AXA-A2-2510-0739/9LJ