介護保険とは?公的制度と民間保険の違いを分かりやすく解説
備えとして知っておきたい基礎知識
公開日:2025/12/10


高齢化が進む中、「年齢を重ねるにつれて、将来の介護が気になり出した」という人もいるのではないでしょうか。日本には公的介護保険制度がありますが、それだけで希望する介護が十分に受けられるのか、不安を 感じている人も少なくありません。
そこで本稿では、公的介護保険制度の基本概要や、受けられるサービスの内容について詳しくご紹介します。併せて、民間保険会社が提供する介護保険についても解説します。
公的介護保険とは?制度の目的と仕組みを解説
介護保険には国の制度である「公的介護保険」と民間保険会社が提供する「民間介護保険」があります。公的介護保険は40歳以上になれば全員が自動で加入対象となりますが、民間介護保険は自分の意思で加入を決定するものです。
まずは、公的介護保険制度についてご紹介します。制度の仕組みやどのようなサービスが受けられるのかを理解しておきましょう。
介護保険制度の基本概要と導入の背景
公的介護保険制度は、2000年に創設されました。高齢化の進行により介護を必要とする人が急増したことが創設の理由です。さらに、核家族化の進展で家族による介護が難しくなり、介護のために仕事を辞めざるを得ないケースが社会問題となっていました。こうした状況を受け、家族の介護負担を軽減し、社会全体で支える仕組みとして制度が導入されたのです。
そして、介護保険にはもう一つの目的があります。以前の介護といえば、高齢者ができないことの補助が主な目的でした。しかし、公的介護保険制度では、高齢者のADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)向上で、できることを増やし、年齢を重ねても充実した生活を送れる人が増加すること、それに伴って介護者の負担が軽減されることも目指しています。
対象者(第1号・第2号被保険者)と加入条件
40歳以上の全ての人が公的介護保険に自動加入となり、「第1号被保険者」「第2号被保険者」に分かれます。表で詳細を確認しておきましょう。
| 第1号被保険者 | 第2号被保険者 |
対象者 | 65歳以上の人 ※第2号被保険者が65歳になった時、自動的に第1号被保険者に切り替わる | 40歳以上65歳未満の人で健保組合・全国健康保険組合・市町村国保などの医療保険加入者 |
保険料の徴収方法 | 年金からの天引き ※市町村・特別区が徴収 ※65歳になった月から徴収が始まる | 医療保険料と共に徴収 ※40歳になった月から徴収が始まる |
受給要件 | ・要介護状態 ・要支援状態 | ・要介護・要支援状態が老化に起因する疾病(関節リウマチや筋萎縮性側索硬化症などの特定疾病)に依る場合に限定される |
※ 厚生労働省「介護保険制度について(40歳になられた方へ)」内の表を元に筆者作成
受けられるサービスの種類と内容
公的介護保険の対象となるサービスは、自宅でも施設でも受けることができます。サービスの例は以下の通りです。
【介護サービス利用についての相談やケアプランの作成】
・居宅介護支援
【自宅での家事援助サービス】
・訪問介護(ホームヘルプ)
・訪問入浴
・訪問看護
・訪問リハビリ
・夜間対応型訪問介護
など
【施設での通所日帰りサービス】
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリ
・地域密着型通所介護
など
【施設で生活・宿泊しながらの長期間・短期間サービス】
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・短期入所
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
・介護老人保健施設(老健)
・特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホームなど)
など
【訪問・通所・宿泊を組み合わせたサービス】
・小規模多機能型居宅介護
・看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
など
【福祉用具利用】
・福祉用具の貸与
・特定福祉用具購入費の給付
など
なお、公的介護保険の給付方法は以下の2通りです。
・現物払い:介護サービスを受ける際、利用者は自己負担分を支払い、差額は市区町村から事業者へ支払われる
・償還払い:介護サービスを受けた際、利用者が 一旦全額自費で支払うが、後日自己負担分を除いた金額が戻ってくる
給付を受けるまでの手続きと要介護認定
公的介護保険のサービスを受ける前に、必要度判断を目的とした「要介護・要支援認定」を受けなければなりません。
認定の申請は原則として本人・家族が行いますが、例外的にケアマネージャー(居宅介護支援事業者)が行う場合もあります。新規申請と介護サービス利用までの流れは以下の通りです。
1.市区町村の窓口に必要書類を提出し、要介護認定申請を行う
2.市区町村からの依頼によりかかりつけ医が意見書を作成・提出
3.市区町村の調査員が自宅・施設を訪問し、心身の状態を確認
4.調査員の確認結果、かかりつけ医の意見書をもとにコンピューター判定(一次判定)を行う
5.一次判定の結果とかかりつけ医の意見書をもとに要介護・要支援度の判定( 二次判定)を行う
6.判定結果の通知
7.要介護・要支援認定区分に応じ、ケアマネージャーと共に介護サービス計画書(ケアプラン)を作成
8.介護サービス利用開始
介護サービス申請に必要な書類は以下の通りです。
・要介護・要支援認定申請書
・(第1号被保険者のみ)介護保険被保険者証
・医療保険被保険者証のコピー(マイナ保険証の場合はマイナポータル健康保険証の資格情報)
※提出書類は市区町村により異なる場合があります。
要介護・要支援の区分は以下の表の通りです。
区分 | 状態の目安 |
要支援1 | 日常生活はほぼ自分でできるが、一部に見守り・手助けが必要 |
要支援2 | 日常生活の一部に見守り・手助けが必要 適切なサービスの利用で 状態の維持・改善が期待できる |
要介護1 | 日常生活の一部に見守り・手助けが必要 |
要介護2 | 軽度の介護が必要な状態 認知機能の一部に低下が見られる状態 起き上がりや歩行などに何らかの支えが必要 |
要介護3 | 中等度の介護が必要な状態 認知機能の低下が見られる状態 起き上がり・立ち上がりが自分一人ではできない 食事・排泄などに介助が必要 |
要介護4 | 重度の介護が必要な状態 全般的な認知機能の低下が見られる状態 起き上がり・立ち上がり、歩行などが1人ではできない 食事や排泄、入浴などに全面的な介助が必要 |
要介護5 | 身の回りの世話や移動などの動作がほとんどできない 多くの問題行動などが見られる状態 |
※埼玉県朝霞市「要支援・要介護度の目安」内の表を元に筆者作成
利用時の自己負担に注意
公的介護保険は「国・自治体の公費+40歳以上の国民の保険料」を財源として運営されていますが、要支援・要介護認定を受けたとしても、介護サービスを無料で受けられるわけではありません。40歳~64歳は1割、65歳以上の場合は収入に応じて1~3割の自己負担があります。1割負担であれば、1万円のサービスを受ける場合の自己負担額は1,000円です。
また、負担割合だけでなく支給限度額も決まっており、限度額を超えた分は自己負担になります。ただし、「高額介護サービス費支給制度」があるため、所得などによって決まっている自己負担上限額を超えた場合は、市区町村に申請することにより戻ってきます。
民間介護保険の役割と特徴
公的介護保険では要介護・要支援度に応じて、必要なサービスが受けられます。ただし、公的保険でカバーされる範囲には限界があります。また、用途自由な現金の給付がない点も注意が必要です。
そこで注目したいのが、自分の意思で加入する民間保険会社の介護保険です。公的介護保険と民間介護保険の違いを表で確認しましょう。
| 公的介護保険 | 民間介護保険 |
加入者 | 40歳以上の全ての人 | 自由意志で加入 |
給付対象者 | 要介護・要支援認定を受けた人 | 保険会社所定の要介護状態になった人 |
給付対象者 | 要介護・要支援認定を受けた人 | 保険会社所定の要介護状態になった人 |
支給方法 | サービスなどの現物支給 (1~3割の自己負担あり) | 現金を支給 (用途は問わない) |
保険料 | 市区町村や加入する保険組合により異なる | 保障内容・年齢などにより生命保険会社が定める |
税制優遇の有無 | 社会保険料控除 | 生命保険料控除 ※保険料は生命保険会社が決定 |
※ 厚生労働省「介護保険制度について」を元に筆者作成
民間介護保険のメリット~給付金の使い道の自由度と安心感
民間介護保険は、現金で給付がある点が大きなメリットです。受け取った給付金の使い道は柔軟に決められるため、直接介護に関連することでなくても構いません。医療費や生活費にも使えるため「介護で家計の支出が増加しそう」といった場合の安心感にもつながるでしょう。
民間介護保険があると介護の選択肢が広がる
公的介護保険で要介護・要支援度に応じた介護サービスを受けた場合、自己負担は1~3割に抑えられます。しかし、介護される人の日常生活(食事・居住費など)に関する費用は全額自己負担です(介護保険施設利用時の食費・居住費は軽減される場合があります)。民間介護保険は現金支給になりますので、これら自己負担費用の補助として使えます。民間介護保険に加入しておくことで、備えが少ない場合の不安も払しょくでき、介護の選択肢も大きく広がるはずです。
また、介護する家族の収入が減った場合や面会のための交通費などのカバーにも、民間介護保険は有効です。
民間介護保険を選ぶときの比較ポイント
民間介護保険は各保険会社が販売しています。選ぶ際のポイントは以下の通りです。
・給付条件
・一時金型か年金型か
・保障内容・保険料・保障期間のバランス
詳しく見ていきましょう。
給付条件のチェック
民間保険会社が販売する介護保険の給付条件は各社で異なります。検討の際は、どの介護状態で給付されるのかをしっかり確認しましょう。具体的には以下のような状態で給付になるものが多いようです。
1.保険会社所定の介護状態になった
【所定の介護状態の例】
・認知症と診断され、見当識障害があり、その状態が180日以上続いている
・日常生活で介護が必要になった
など
2.公的介護保険制度で「要介護3以上」や「要介護2」状態になった
一時金型と年金型の選択
民間介護保険の給付金の受け取り方は主に以下の2種類です。
1.一時金型
・まとまった金額を一括で 受け取る方式です。リフォーム費用や介護施設入所の頭金などに向いています。
2.年金型
・毎月一定の金額を受け取る方式です。生活費の補助に向いています。
一時金型と年金型を組み合わせた商品を販売する保険会社もあります。
保障内容・保険料・保障期間のバランスを考える
民間介護保険に加入すると、毎月保険料を支払わなければなりません。保険料は以下の要素で決定します。
・一時金100万円、毎月5万円などの給付金額
・終身払、短期払など保険料の払込期間
・終身型、有期型などの保障期間
給付金額を高くし、保障期間を終身型にしておくと安心度は高くなりますが、保険料は高くなります。無理なく保険料を支払えるのか、バランスも考えて検討しましょう。
アクサ生命の介護保険の特徴と注目ポイント
アクサ生命でも「ユニット・リンク介護保険(終身移行型)」という変額保険と『アクサの「一生保障」の医療保険 スマート・ケア 認知症重点プラン*』という医療保険の2つの介護関連の保険を取り扱っています。特徴と注目ポイントを確認してみましょう。
*医療治療保険(無解約払いもどし金型)Ⅲ型
通院支援特約(退院・外来手術時給付型)/認知症一時金特約付
アクサの「一生保障」の医療保険 スマート・ケア 認知症重点プラン
病気やケガの保障がある医療保険に認知症一時金特約を付加した保険です。認知症と診断確定され、かつ、公的介護保険制度の要介護1以上に認定されたときに一時金が支払われます。また、認知症で一時金の請求ができない可能性もあるため、家族などあらかじめ指定した指定代理請求人が代理で一時金を請求できる「指定代理請求特約」が付加されています。指定代理請求特約には保険料はかかりません。
参考:医療治療保険(無解約払いもどし金型)Ⅲ型 通院支援特約(退院・外来手術時給付型)/認知症一時金特約付
※このご案内は商品の概要を説明しています。ご契約の際には、「重要事項説明書(契約概要・注意喚起情報・その他重要なお知らせ)」「ご契約のしおり・約款」を必ずご覧ください。
介護+老後の備えができる「ユニット・リンク介護保険(終身移行型)」
介護の備えだけでなく、老後の生活資金を準備したい方に適しているのが、アクサ生命が提供する介護保険「ユニット・リンク介護保険(終身移行型)」です。
この保険では、以下の状態になった場合に介護保険金が支払われます。保険金給付の基準が分かりやすいのが特徴です。
・公的介護保険制度の「要介護2以上に認定されたとき
・または、アクサ生命所定の要介護状態が180日継続したと診断確定されたとき
払い込んだ保険料は特別勘定で運用されるため、運用ボーナスを狙うこともできます。保険料払込期間(第1保険期間)中、介護・死亡・高度 障害の保障があるのも安心です。
また、保険料払込期間終了後(第2保険期間中)も介護・死亡・高度障害の保障を継続させることができますが、以下の2つからの選択も可能です。
・解約して、解約時払いもどし金を受け取る
※解約されると以後の保障はなくなります。
※払いもどし金額が払込保険料総額を下回る場合があります。
・「年金払移行特約」を中途付加し、積立金などを年金で受け取る
※契約の全部を年金払に移行した場合、以後の介護・死亡・高度障害保障はなくなります。
「ユニット・リンク介護保険(終身移行型)」には、「3大疾病保険料払込免除特約」または「7大疾病保険料払込免除特約」を付加することができます。所定の状態になった場合、その後の保険料の払込は不要です。
※ユニット・リンク介護保険(終身移行型)には投資リスクやご負担いただく諸費用があります。詳しくは、「投資リスク・費用」をご確認ください。
※このご案内は商品の概要を説明しています。ご契約の際には、「契約締結前交付書面(契約概要/注意喚起情報)」「ご契約のしおり・約款」「特別勘定のしおり」を必ずご覧ください。
将来の介護に備えるために今できること
高齢化社会の現代では、誰もが介護を受ける可能性があります。介護は受ける本人だけでなく家族全体に影響が出るため、経済的・身体的に余裕があるうちに備えについて考え、行動し始めましょう。
アクサ生命では、介護などの将来のための備えや保険についての相談を受け付けています。ぜひご活用ください。
■記事の監修者


名前:田尻宏子(たじりひろこ)
保有資格:2級ファイナンシャル、プランニング技能士、証券外務員一種
経歴:証券会社、生命保険会社、銀行など複数の金融機関での勤務経験後、2016年から主に生命保険、損害保険、株式投資、ローン、相続関連等の金融分野専門のライターとして活動中。
お金の初心者から上級者まで誰もが納得できる記事を書くのが得意。
AXA-A1-2511-0520/9LJ
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