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脳を萎縮させる、毎日の飲酒習慣

2023年12月28日 | 健康のこと -Health-

「酒は百薬の長」ということわざを免罪符に、日々、お酒を楽しんでいる方は多いことでしょう。ストレスを解消したり、コミュニケーションを円滑にするといった、精神的、社会的なメリットがある反面、実は、脳にとっては看過できない大きな悪影響があることが、昨今の研究で明らかになってきました。
その悪影響とは何かというと、脳の萎縮です。

飲み過ぎた次の日の朝に「何も覚えていない…」「どうやって帰ってきたか、記憶にない」など、一時的な記憶喪失になったことがある人は少なくないでしょう。これは、記憶を司る脳の部位である「海馬」の働きを、アルコールがストップさせてしまうことで起こります。これを「ブラックアウト（一時的記憶喪失）」といいます。
ブラックアウトを頻繁に繰り替えすほどの飲酒を続けていると、海馬の一時的な機能不全が、慢性的になってしまう可能性が高くなります。すると、何が起こるのかというと、海馬の萎縮です。

2017年に、オックスフォード大学とロンドン大学の研究チームは「アルコールの摂取量が増えるほど海馬の萎縮リスクは上昇する」と発表しました。平均年齢43歳の男女550人を対象に、アルコール摂取量と脳の変化をMRI検査で30年間追跡、解析したところ、アルコールを飲まないグループと比べると、適量飲酒のグループの海馬の萎縮リスクは3.4倍、多量飲酒のグループは5.8倍に高まることが確認されたのです。

また、東北大学加齢医学研究所が行った研究でも、同じことが確認されています。20代から80代まで、2,300人の脳画像を解析し、脳の加齢にはどんな生活習慣が影響を与えるかを分析したところ、脳萎縮を促進させる要因として、高血圧や肥満のほか、飲酒も大きく関連していることが分かったのです。
さらに、たくさんお酒を飲んでいる人ほど、脳萎縮の割合が高くなることも判明しました。

飲酒による脳萎縮は、認知症のリスクも高めてしまいます。過去4年間以上の大量飲酒の過去がある高齢者は、そうでない高齢者と比べると、認知症になるリスクが4.6倍になるという調査もあります。
「適量ならよい」とも考えたくなりますが、65歳以上の健常者を対象にした調査でも、脳血管障害のリスク因子となること、生涯アルコール飲酒と脳容積には逆相関がみられることも確認されています。つまり、飲めば飲んだだけ、脳は萎縮するということです。
生涯、脳を健全に保つためには大量飲酒は避けること、そして、飲酒を習慣づけないことを、脳科学者としておすすめします。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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