健康寿命と平均寿命を近付けるには?人生100年の健康維持のヒケツは「諦めない」こと

#健康 #老後 #人生100年 #ライフスタイル #今できること #インタビュー

1950年頃には男女ともに約60歳だった日本の平均寿命。それから半世紀を過ぎた平成28年度には、男性が約80歳、女性は約87歳にまで延伸しました*。さらに今後も日本の平均寿命は伸びると予測されており、現在60歳のひとの4分の1は90歳近くまで生きる**との見方もあるほどです。

*参考:「平成30年版高齢社会白書」より
**参考:「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」」より

世界屈指の長寿国となった日本。喜ばしいことではありますが、一方で、WHO(世界保健機関)が「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義している「健康寿命」については、男性が約72歳、女性は約75歳との報告が。つまり、日本の場合、平均寿命と健康寿命との間には、単純計算すると男性なら約8年、女性は約12年、差が生じています。

この差を問題とし、近年、官民一体となって健康寿命を延伸させようとの取り組みが活発になっています。では、私たち自身はこの状況をどう考え、どう行動すればいいのでしょうか?医師の意見も交えながら考えてみましょう。

平均寿命・健康寿命とは?

毎年、厚労省から発表される平均寿命。しばしば「その年に亡くなったひとの平均年齢」と誤解されがちですが、実際には「その年の死亡率が変わらないと仮定して、その年に生まれた0歳児がその後何年生きるかを推計したもの」を意味します。

0歳児が長く生きられる環境になるには、公衆衛生の充実や医療体制の高度化といった社会の成熟が欠かせません。そうした意味から、平均寿命が伸びることは大いに歓迎されてきました。

しかし、そのような成熟社会であるからこそ「単に寿命が長ければ健康か?」という議論が持ち上がり、その結果として誕生したのが「健康寿命」という概念です。「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を指すこれは、計算方法が複雑で、ある程度の人口規模が必要とされています。また、「健康、あるいは不健康な状態というものは、本来は連続的であって厳密に健康と不健康に二分できるものではない」といった意見も少なくないようです。

参考:「健康寿命の算定方法の指針」「健康寿命の算定方法Q&A

他方、超高齢社会に踏み出すにあたり、日本社会全体として、公的な社会保障制度の負担を低減させることや、熟練の働き手の技術や技能を伝承する必要性は高まっています。そうした背景から、「人びとができるだけ長く『健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できるように』」との願いのもと、健康寿命を延伸させるための取り組みが、厚労省や自治体、企業の間で試みられています。

健康寿命を伸ばすための取り組み

前述のように産官学による「健康寿命を延伸させる取り組み」のひとつに、「スマート・ライフ・プロジェクト」があります。「健康寿命をのばそう!」をスローガンに、「運動」「食生活」「禁煙」の3分野を中心とした具体的な改善アクションを実施し、国民全体が人生のさいごまで元気で健康に楽しく毎日が送れることを目標とした取り組みです。

参考:「スマート・ライフ・プロジェクト

なかでも、企業や団体の成功事例の中から、特に画期的だと考えられるものを取り上げて表彰する「スマート・ライフ・プロジェクト アワード」は、2019年に第8回を数えるまでの継続的な活動になっています。初回から今回までのアワードは同サイトでも紹介されているので、これから「自分たちの会社、団体などでも取り組みを始めたい!」と計画しているなら、大いに参考になることでしょう。

参考:「スマート・ライフ・プロジェクト アワード一覧

このように、健康寿命を延伸させるための取り組みは社会全体で広がりを見せています。しかし、それでもやはり、「一人ひとりがそれぞれの意志で健康寿命を伸ばせるように努力する必要がある」ということは揺るぎない事実です。そうしたことから、近年、健康な状態をできるだけ長く保とうと努力するきっかけを作ったり、実践しようとする個人を応援する動きが、地域に根ざす医師を中心に活発になり始めています。

長野県佐久市で心臓疾患・高血圧を中心に、脂質異常症(高脂血症)や動脈硬化など、生活習慣に伴う病気の診断と治療、生活の相談を行なう「佐久心臓血圧クリニック」の竹村隆広医師もそのひとり。地域のひとたちと接するなかで、健康寿命と平均寿命の関係性についてどのように感じているか、聞いてみました。

寿命がこれだけ伸びているのだから、差があることは不思議じゃない

――健康寿命と平均寿命の差を少なくしよう、という機運が高まっています。先生は、日々の診療のなかで「2つの寿命の差が大きい」と感じることはありますか?

ひとりの開業医として、健康寿命と平均寿命の差があるとの実感はあります。実際に、長野県佐久市は長寿のひとが多いのですが、介護施設も多く、介護認定をする数も多くなっています。これはつまり、「健康寿命が損なわれているひとが多い」ということの証左でもあると言えるでしょう。

しかし、このこと自体は不思議なことではありません。寿命がこれだけ伸びているのですから、人生の終末期に病気が見つかったりケガをしてしまったりして、いわゆる健康寿命が損なわれることだってあるでしょう。平均寿命がかなり伸びているため、健康寿命との差が広がりやすい状況になっている、との見方もできるのではないでしょうか。

さらに、日本はどんな場所でも質の高い医療を受けられると言われますが、それでも治療してもらう医師や医療の質に違いが生じることは避けられないものです。そしてそれは、患者さんのQOL(クオリティー・オブ・ライフ)にも影響すると考えられます。どのような医療にアクセスできるか、これまで患者さん自身がどのような医療を選択してきたか、そして、これからどのようなものを選択するか、これらが健康に深く関係することだと言えます。

――情報があふれる今日、医療や健康に関する情報もたくさんあり、触れやすくなっています。そうした環境だからこそ、医療を受ける側は、「どのような医療を選択するか」迷うことが多いものです。また、「本当にこの判断が正しいのか?」と不安を感じることや、選択後も「本当にそれでよかったのか?」と、悩み続けることだってあります。そうした医療選択に関するモヤモヤを解消すべく、アクサ生命では「医療選択のサポート」を行なっています。先生は多くの患者さんと向き合うなかで、人びとが健康にまつわる情報に触れる機会が増えている、と感じることはありますか?

TV番組で健康について取り上げる機会は昔からあったと思いますが、インターネットやスマートフォンが普及してからというもの、健康に関する情報に触れる機会は格段に多くなったと言えるでしょう。それらがきっかけとなって、年齢を問わず、人びとの健康意識が高まっているようにも感じます。

特に、TVの健康特集や医療をあつかったバラエティ番組は人気なうえ、インパクトも大きいようですね。私も日々の診療の中で、「先生、あの番組見た?」と水を向けられることがあります。話についていくためにも、できるだけ目を通すようにしているほどです(笑)。

ただ、一方で、「医者にかかってさえいれば良い」と、自分の健康を保つことを医師に“丸投げ”しているひとも少なくはありません。意識や興味関心は高まっているけど、そうでないひともいるし、健康情報を仕入れてもそれを実践に移すかどうかは別問題なのでしょう。

参考:「アクサ生命の医療選択サポート(付帯サービス)

関心度合いによって働きかけへの反応が異なるという現実

――「運動をして、正しい食生活を心がけ、禁煙する」の3本柱が健康維持や増進に効果的というのはよく知られたことです。しかし、これを実践するかどうかは健康への意識や関心度合いによって異なるとの話がたびたび聞かれます。先生もそうしたことを感じますか?

そうした傾向はあると思います。たとえば、つい最近、私のクリニックは地元商工会のイベントで動脈硬化測定のブースを出展しました。その目的は、中小企業や個人事業主の方にも健康意識を高めてもらいたい、というものでした。

それというのも、大企業は以前から年間のイベントとして健康診断を行っているのはよく知られていますし、最近では、社員に健康意識の向上を促して健やかな状態で長く働いてもらえるように環境を整える「健康経営」に力を入れる企業も増えています。

一方、中小企業や個人事業主はというと、そうしたことへの意識や行動が依然として二の次になりやすい、という問題が指摘されています。中小企業や個人事業主の方々は、たとえば健康診断を受診するにしても、費用負担や受診までの手配など、“見えない負担”がかかるものです。そのため、健康診断の受診を後回しにしてしまいがちで、結果として病気も発見されづらい状況に陥りやすくなってしまっているのだと考えられます。

私としては、このようなひと達にこそ、まずは気軽に地域のイベントで動脈硬化測定を受けてみることから健康への意識を向けてほしかったのです。ですが、出展したのが「健康」をテーマにしたブースだったためか、実際に測定に来るのは健康意識の高いひとが多く、そうでないひとはなかなか興味を示してくれない、という結果になりました。

――健康に意識を向けるには、さまざまなハードルがあるということかもしれませんね。

そうですね。特に現役世代でバリバリと働いているひと達は、健康であることが「当たり前」と感じていて、その状態がずっと続くと思い込んでいるフシがあります。しかし、本当にそうなのか?自分が健康だと安心してもいいのか?を判断するためにも、まずは健康診断でいまの状態をチェックする価値はあるでしょう。

健康診断の受診率向上に向けて、市町村なども努力されていますが、予算や人的リソースなどの問題は少なからずあるようです。また、そうしたハードルを越えたとしても、最後には個人の意識の変化が最も大きく作用するものです。

ただ、検診率が上がっている地域では、医療の介入の度合いが高いという話も聞きます。健康診断などをきっかけに医療機関と関わりを持つことで、健康を維持しやすい環境が整う可能性も高まることでしょう。これは健康を維持するにも、病気を早く見付けるにも、そこから先の人生を考えるうえでも、意味のあることではないでしょうか。

働き盛りの世代が抱える健康リスクは地域や生活習慣によって異なる

――健康診断の受診率もさることながら、現役世代には「適度な運動・バランスのいい食生活・充分な睡眠」を確保することすらままならない、という状況のひともいらっしゃるかと思います。特に、30〜50代の働き盛りの世代は、そうした傾向があるように思います。また、それこそ「3つのことはできていなくても、いましっかり働けているから問題ない」と思いがちでしょう。先生の目から見て、そうしたひと達が将来的に抱えることになりかねない健康上の問題点にはどのようなものがあるでしょうか?

個人の状況によって異なるものの、私のクリニックで意識しているのは、基本的に血圧にフォーカスしながら、望ましい食生活と適度な運動を続けるように強くオススメすることです。そう考えたとき、30〜40代の食生活や運動習慣については心配なことが多々あります。特に指摘したいのは、塩分と炭水化物の摂りすぎです。

たとえば、みなさんも生活のなかで経験があると思うのですが、どれだけ忙しくてもコンビニなどで手軽にお弁当やお惣菜などを購入できて空腹を満たせるしエネルギーも摂れますよね。その反面、栄養バランスが偏りやすいことは理解しておく必要がありますし、それをどう補うか考えて行動することも大切です。

ただし、これは都会での問題点と言えるかもしれません。地方に行くと、実家暮らしで食事が用意されている場合も少なくないですし、家族で食事を摂る機会が多いので、そうした食生活をするひとが都市部に比べて少ないと考えられます。

しかし、地方に行けばいくほど自動車で移動しなければスーパーや病院などにアクセスできない、いわゆる「クルマ社会」になっています。それゆえ、運動の量が圧倒的に不足しやすいと言えます。都会のように、家から駅まで、駅から会社まで、駅構内の階段で、たくさん歩くという運動の機会が、地方では確保できない、というわけです。

健康を保つ方法を考える際、このような「そのひとが暮らす地域ごとに見られる特徴や状況(環境要因)」にも目を向けることが重要です。

――運動と聞くと、私たちは「テニス、ランニング、フットサル」というように、種目に取り組むことを想像しがちですが、そうではない、ということでしょうか?

運動が健康に貢献することは長い研究のなかで証明されていて、高血圧においても有効だと分かっています。ただ、必ずしもいま挙がったようなスポーツをすることだけが「運動」なわけではありません。たとえば、早足で歩くことだって「有酸素運動」になり、高血圧をはじめ様々な病気に対して有効性があるんですよ。

一度、健康を損なったからといって諦める必要はない!

――運動や食生活を改善することが健康を維持することに貢献するというのはよく聞く話ですが、それでも病気になってしまったら…と考えると心配になります。いま健康でなかったとしても、運動をしたり食生活を改善すれば健康な状態に戻る、ということはあるのでしょうか?

正しく、しっかりと改善すれば「健康な状態に戻ることは可能」と言えますし、そうした例を私も数多く見てきました。私はこれまで心筋梗塞など重篤な疾患で健康が損なわれたひと達を手術してきたのですが、その方たちが「適度な運動・適切な食生活・充分な睡眠、禁煙」を実践することで、健康を取り戻し、長く生き生きとした人生をおくっていらっしゃる姿を目の当たりにしてきました。

彼らはたしかに大きな病気を抱えてしまったわけですが、良くなかった生活習慣を改善することで「リセット」できた、というわけです。もちろん、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」といったように、再び良くない生活習慣に逆戻りしてしまってはダメですよ。

大きな病気といったきっかけの有無はともかく、多くの人の場合、「もうすでに健康ではないから、生活習慣を変えても仕方ないだろう」と諦めたり、投げ出したりする必要はないと思います。また、もし「生活習慣をどう改善すればいいのか?」と迷っているのなら、医師などに相談してみる価値は大きいと考えます。

現役世代は、「高齢になってから健康に向き合おう」という発想ではなく、「いまは高齢になってからの健康を築く時間だ」と考えながら過ごす意識を。そして、「もし健康を損なうことがあったとしても生活習慣の見直しで改善できることはある」という意識を持つことが、“自分自身の健康寿命”を伸ばすうえで重要だと言えそうです。


人生100年時代は、手探りの時代。たとえば、リタイアした先の人生が社会人として生きた年数と同じくらい広がる、というのはその際たるものと言えるでしょう。では、その時間をどのように過ごすか、それを考えることもまた、健康に意識を向けるきっかけになるかもしれません。

さて、みなさんはこれから先、人生100年でどのような夢をかなえたり、希望を実現させたいですか?まず、これを考えることから始めて、「その時に自分の体・健康の状態がどうあったら理想的か」想像してみるのはいかがでしょうか?

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