来るべき死を見つめ、今を生きる。それがスマート・エイジングの考え方 川島教授×村田教授対談

#人生100年 #健康 #保険 #介護 #老後 #今できること #インタビュー

織田信長が好んだといわれる舞の一節、「人間50年」。その時代から数百年が経過した現在、人間の寿命は当時の2倍近くになりました。ただ一方で、肝心の人生の“中身”は、本当に2倍も充実したものになっているでしょうか。現在における幸せな生き方のカギを握るのが、「脳」と「体」の健康です。これを実現し、人生100年を豊かに生きる秘訣について、東北大学の川島隆太教授と村田裕之特任教授に聞きました。

いくつになっても、脳の機能は改善できる

20歳をピークに低下するといわれる、「脳」の機能。機能が極端に低下した状態が「認知症」であり、手を打たなければ、多くの人がこの認知症に近い状態になってしまうそうです。そうした中、脳の働きを「健康な社会生活が送れるレベル」に保つには、どんなことを行なえばよいのでしょうか。

川島教授:
私たちの研究により、科学的な方法で脳のトレーニングを行なえば、脳機能が改善することが分かってきました。トレーニングによって脳の神経細胞同士のつながりが強化され、体積が増えるほか、脳をかたちづくる電気的な回路の働きも活発になります。うれしいことに、これは何歳になっても、きちんとやれば効果が出ます。つまり、脳はよい状態を維持できるということが、最新の脳科学研究によって見えてきたのです。

では、具体的にどんなトレーニングを行なえば認知症の予防につなぐことができるのか。現段階で明らかにいえるのは「有酸素運動」です。ウォーキングや軽めのランニング、器械体操など、有酸素運動には認知症の予防効果があるということが研究のデータから分かっています。

村田教授:ほかにも、介助者とコミュニケーションをしながら文章の音読や計算などを行なう「学習療法」は、短期的には認知機能改善効果が得られたトレーニングの1つといえるでしょう。学習療法は、川島先生が公文教育研究会と共同で2001年に開発し、2004年に商業化したもの。今では全国で約2万5,000人、アメリカでも10州27施設で取り組みが行なわれるなど、幅広く知られているトレーニング方法です。

川島教授:ただ、ここで知っておいてほしいのは、有酸素運動以外のトレーニングについては、まだその効果を確かなものだと断言することはできないということです。

そもそも私たちの研究では、「疫学」の考え方に基づいて効果などを見定めています。疫学とは、様々な人間の集団を追跡調査することで、生活習慣と身体の異変との因果関係などを調べる学問のこと。追跡調査には長い期間が必要なので、ほとんどのトレーニング手法は、まだ疫学的に十分なデータが揃っていないのです。

そのため、我々研究者としては、認知機能改善の効果が「ありそうだ」ということしかいえません。ですが、トレーニングで認知機能が改善した実例はあるので、少なくとも無意味ではないと考えています。

「加齢」は決してネガティブなことではない

もちろん、脳だけを鍛えても健康にはなれません。「脳」と「体」の両方を元気に保つには、日常生活で運動や食事といった様々なことを意識する必要があります。とはいえ、分かっていてもできないのが人間。そこで両教授は、長く、健康に生きるための新しいアプローチを世の中に提唱しています。

村田教授:
多くの人がマイナスイメージを持つ「加齢」をポジティブなものに変換し、誰もが健康に年を重ねるための行動を積極的にとるような世の中にしたい――。そんな発想の下、私たちが2006年から提唱しているのが「スマート・エイジング」という考え方です。

前提として、エイジングとは、生物学的には「卵子が受精した瞬間から死ぬまで」のことを指します。つまり、年齢にかかわらず生き続けることそのものがエイジングなのです。ところが「アンチ・エイジング」という言葉があるように、エイジングという言葉には、どうやら世の中的には後ろ向きなニュアンスがあるようです。そこで私たちは、高齢期を「知的に成熟する人生の発展期」と捉え、高齢者を社会的弱者とみなす従来型の考え方に置き換わるべきものとしてスマート・エイジングを位置付けています。

川島先生のグループが、このスマート・エイジングを達成するための4つの条件を定義しました。1つ目は「脳を使う習慣」、2つ目は「運動する習慣」、3つ目は「バランスの取れた栄養」、4つ目は「社会に関わる生活習慣」です。この4つを満たせば、心身が健康な状態を100歳まで維持することができると考えています。

川島教授:しかし、残念ながら世の中の中高年、特に男性を見ていると、この4つの条件を満たしていない人は多いようです。例えば、定年退職して、日々の目的を失って家の中でボーッとしている人はたくさんいますよね。ゴロゴロして、テレビばかり見ていると認知機能が衰え、運動不足になる。表に出ないので人との交流が減り、社会性も失われていきます。また自分で料理をしない人が多いので、奥さんに先立たれると栄養のバランスも一気に崩れる。このように、先の4つの条件が次々に満たせなくなっていき、心身の健康が損なわれていくわけです。

これを防ぐには、目的を持ち「いつまでにこれをやる」と具体的な目標を立てることが重要です。この「目標を立てる」というのは、大脳の前頭前野という部分の働きなんですね。高齢期に入って、物ごとに興味・関心が持てなくなるというのは、まさに前頭前野の機能が低下している証拠。そのため、前頭前野の機能を高める脳のトレーニングは、スマート・エイジングを達成するための具体的な方法としても提案できるわけです。

よく生きたければ、「死」を見つめること

確かに、生物としての寿命が延びることと、人生の充実度が高まることはまったく別の問題といえます。どんなに長く生きても、間延びした「老後」を過ごすのでは、幸せとはほど遠い生き方になってしまうでしょう。充実した高齢期を過ごすために重要なこと。それが、自分の「死」を徹底的に考えることだと両教授は語ります。

村田教授:
第二次世界大戦で戦没した学徒兵の遺稿を集めた、『きけ わだつみのこえ』という本があります。彼らが、あの若さであれだけ成熟した言葉を書き遺せたのは、「自分たちの人生には先がない」ということを分かっていたからではないでしょうか。人生100年時代といっても、それは平均寿命の話であり、自分の寿命がいつ尽きるかは分かりません。できるだけ密度の濃い生き方をしたいというのは、誰でも考えることだと思います。

川島教授:そうしたとき、私たちが考えるべきなのは「どのように死を迎えるか」ということ。自分の最期がどうあるべきかを徹底的に考えることで、はじめて「今、自分がどう生きるべきか」が見えてくる。これを考えるのが「死生学」という学問領域です。

例えば、最期の瞬間を、家族や知人に看取られて自宅で迎えたいのか、病院のベッドで看護師さんに看取られて迎えたいのか。それとも、認知症や寝たきりの状態で亡くなりたいのか。私たちが行なった調査では、「家族や知人に看取られながら自宅で最期を迎える」ことを理想に挙げる人が多いことが分かっています。

長年、看取りをしてきた方に聞いても、確かにこの状態は理想のようです。例えば、死の数日前に、自分の近しい人が目の前に現れて声をかけてくれるという「お迎え」現象も、自宅で亡くなる人に特有の現象なのだそうです。とても幸せな亡くなり方の例といえるでしょう。

ところが、今の日本でそういう最期を迎えられる人は、全体の1割程度しかいません。多くの人が、病院や介護施設で亡くなる。そして、それらの方は、お迎え現象もほとんど体験しないといわれます。

定年退職の20~30年後には、誰もが生物学的な死を迎えます。30代、40代のビジネスパーソンは、「まだ時間はある」と思っているかもしれませんが、実際は残り時間はそう多くありません。まして定年後の人たちは、もうすぐ寿命が尽きることが分かっているのに、誰にも会わず、ゴロゴロしながら家でテレビを見ていて、理想の最期を迎えられるのでしょうか。答えはNOです。

私は、人間の不幸の根っこにあるのは、「今しか見ようとしない」態度だと考えています。スマートに年を重ねていくため、自分の未来を考えるきっかけをどうつくるか。それが現在のすべての人の大きなテーマだと思います。誰にも等しくやって来る「死」というゴールを意識し、今日、明日をどう生きるのかを徹底的に考えてほしいと思います。

村田教授:東北大学では、2012年から「スマート・エイジング・カレッジ」を開催しています。このカレッジでは、企業向けにスマート・エイジングの知見を持つ人材の育成をお手伝いすることで、これまでにない商品・サービスの開発体制づくりをサポートしています。今後、こうした視点は、企業にとってもますます重要になっていくでしょう。

川島教授:その点、生命保険は「死」を前提として考えられた珍しい商品です。日本社会では、とかく死がタブー視されがちですが、生命保険を検討するときだけは「自分が死んだらどうなるのか」を絶対に考えなければいけません。家族と、「死」のことやその先のことを、前向きにとことん話し合える。生命保険を検討するということは、自分の死と真正面から向き合う、よい機会といえるかもしれません。

その意味では、生命保険の募集人は、死生学を人びとに広める「伝道師」の役目を負っているともいえます。一人でも多くの人に、「死」のことを考えるチャンス、きっかけを提供してもらえればと思います。

生物学的な死の直前まで、明るく前向きに生きる

スマート・エイジングの考え方は、人びとの人生にポジティブな影響をもたらすだけでなく、社会全体にも様々なよい影響をもたらすことが期待されています。現在の日本社会は、少子高齢化や労働力人口の減少といった難しい問題を抱えていますが、それらの問題も解決される可能性があるのです。

村田教授:
スマート・エイジングの考え方が普及すれば、健康寿命が生物学的な寿命に限りなく近づき、それに伴って世の中にも様々な変化が起こるでしょう。私は、次のようなことを想像しています。

例えば現在は、少子高齢化で医療/介護保険などの社会保障費が膨れ上がり、国家財政を圧迫しています。しかし、そもそも健康な人が増えれば、医療費や介護費用の増大に歯止めがかかり、より少ない税収で賄えるようになるはずです。また元気な高齢者が増えるので、定年は70歳もしくは75歳になる。そうすれば、年金の支給開始年齢も引き上げられます。場合によっては消費税を引き上げる必要だってなくなるかもしれません。

さらに、健康寿命が延びると、定年後も活動的に過ごす時間が増えます。すると、「そこで何をやるか」が次の関心事になります。体力がない人でも携われる仕事が増えるほか、動作を補うサポート器具が開発されて、広く普及する可能性もあるでしょう。働く高齢者のための食品コーナーがスーパーにできたり、ジムや“脳トレ教室”などが街中に増えていったりする。あるいは、高齢者の再婚を支援するサービスなども登場してくるかもしれません。

これらはいずれも、先ほど紹介したスマート・エイジングの4条件を満たすための仕組み/枠組みといえます。企業は、こうしたニーズの高まりを見据えた製品やサービスを企画・検討することで、新たなビジネスチャンスを手にすることができる可能性があります。

川島教授:ただし、今、村田先生が話したような世界は、あくまでスマート・エイジングが広く受け入れられるようになった場合のものです。厳しい言い方かもしれませんが、私は、人びとがこれまでと同じ年のとり方を続けて、誰もが介護される側に回るような世の中がくれば、社会の財源はつぶれると考えています。

そうなれば、仮に自分が、介護が必要な身になっても、介護してくれる人は家族しかいません。スマート・エイジングは、そこにはまり込まないようにするための方法であり、これからの時代に必須の考え方だと思っています。

私にも、理想の最期があります。まず3日前に親が夢枕に立ってくれて挨拶をする。当日は、枕元にいる女房と子供と孫に「じゃあ、先に行ってるぞ」と伝えて死ぬのです。生物学的な死の直前まで、家族と笑いながら会話して、そのまま穏やかに旅立つ――。これが実現できれば、とても幸せだと思いますね。


プロフィール
川島隆太
1989年東北大学大学院医学系研究科修了(医学博士)。2009年同大学加齢医学研究所スマート・エイジング国際共同研究センター センター長、2014年同大学加齢医学研究所 所長、2016年同大学スマート・エイジング学際重点研究センター センター長。専門は脳機能イメージング学。著書に『めざすは認知症ゼロ社会! スマート・エイジング:華麗なる加齢を遂げるには?』『脳を鍛える大人の音読ドリル』『脳を鍛える学習療法ドリル』『スマートな脳』などがある。また監修したニンテンドーDS用ソフト『脳を鍛える大人のDSトレーニング』は、2005年の発売以来、販売数1,900万本を超える大ヒットを記録している。

村田裕之
1987年東北大学大学院工学研究科修了。仏国立ポンゼショセ工科大学院国際経営学科修了。日本総合研究所などを経て2002年村田アソシエイツ代表に就任。日本のシニアビジネス分野のパイオニアとして多くの民間企業の新規事業を支援。現在スマート・エイジング学際重点研究センター企画開発部門長。著書に『スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣』『成功するシニアビジネスの教科書』『シニアシフトの衝撃』など多数。

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