5分で分かる!「2019年版 中小企業白書」の読みどころ ~後編-新たな衝撃に攻めと守りで対応するために~

#会社経営 #今できること #仕事 #保険

中小企業庁が毎年公表している「中小企業白書」と言えば、その時々に合わせたテーマやトピックが取り上げられた時代を読み解く資料と言えます。「2019年版 中小企業白書」では、中小企業が直面するいくつかの課題について、それを先んじて解決した多くの企業の事例も取り上げられています。

ここでは、「5分で分かる!『2019年版 中小企業白書』の読みどころ」として、前編の第2部「経営者の世代交代」に続き、第3部「中小企業・小規模企業経営者に期待される自己変革」について、読み進めていきたいと思います。

多くの経営者が頭を悩ます「AIやIoTのような新しい技術とどう向き合うか」や、「どうやってそれを自社のメリットに転化させるか」といった難題に対するヒントが得られたり、事業継続計画(BCP)についての漠然とした疑問を解決する参考になればと考えます。

経営者に期待される自己改革

第3部は、経済と社会構造の変化を紐解くところから始まり、それを受けてどのように自己改革していくか?についての分析がなされています。

なかでも「事業改善」はメイントピックと言えるでしょう。そうなると、真っ先に思いつくのがAIやIoTを活用したデジタル化による生産性の向上や業務の効率化です。しかし、中小企業の経営者からは、「どの程度の経営改善が見込めるかわからないので、デジタル化に先行投資をするのは…」と二の足を踏んだり、「自社のビジネスにどうIoTやAIのような最新技術を組み込めばいいのかわからない」といった意見も聞かれるものです。

では、どのように進めれば自社の成長に貢献し、地域の課題解決に一役買うことができるのでしょうか?ユニークな事例と共に読み解いていきましょう。

●AIやIoTの活用、新しい発想が事業にも従業員の働きやすさにも貢献した事例

最新技術を導入するにあたり、費用対効果もさることながら、現場の従業員のみなさんが「新しいもの」に馴染めなかったり、導入自体に反対することも予想されます。これが理由で導入を先送りするという経営者もいらっしゃるかもしれません。そんなとき、従業員のみなさんと議論を進める上で参考になりそうなのが次の事例です。

AIによるデータ分析で、業務改善や従業員の士気向上、売上拡大を実現した企業」は、三重県伊勢市の飲食店。それまでは、レジもない食券式の大衆食堂で「経験と勘」によって事業が支えられていたそうです。ここに、大手IT企業に勤めていた現社長はAIを導入。来店予測によって需要を予測し、フードロスや現場のオペレーションの最適化をはかったとあります。これによって、従業員を増やさず週休2日制や長期休暇の導入も実現したとのこと。さらに、従来と比べ売上高を4 倍に増加させることができたため、給与アップもできたそうです。
(2019年版 中小企業白書「事例 3-1-6 有限会社ゑびや」を加工して掲載)

設備のシェアを通じて、中小製造業の設備に関する課題を解決している企業」として紹介されている事例も、大変興味深いものです。

一般的に、製造業では設備を自ら所有するものですが、この設備投資には大きな負担が伴います。さらに、近年のように技術進化のスパンが早く、あっという間に“時代遅れ”になるリスクすらあります。こうした点を解決するのが、「使っていない設備を持っている企業」と「設備を使いたいが自前での購入は難しい企業」をマッチングするプラットフォーム・サービスです。近年話題のシェアリングエコノミーのBtoB版とも言えるこの取り組み。どちらの立場にも利点はありますが、それに加え、プラットフォーム上で企業同士が協力して新しい可能性の芽を育むことにもなるかも知れません。
(2019年版 中小企業白書「事例 3-1-7 株式会社シェアリングファクトリー」を加工して掲載)

いずれの事例も、これまでの常識を超えた取り組みではありますが、「新しいものに飛びついて導入した」というよりも、「それが現場に導入されることは必然的だったのだろう」と思わせる内容です。自社や自らが直面する課題を整理したり、「こうあったらいいのに」という想いが改革に結びついていった、と考えられるでしょう。

今後、確実に人口減少が進むなか、特に地方部では地域コミュニティを支えるという意味でも、中小企業や小規模事業所の事業継続が強く求められています。それを実現するためには、2つの事例のように「その手があったか!」という発想が必要なのでしょう。

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防災・減災対策は経営者の新たな課題に

経営者は、高齢化に伴う事業承継や時代の変化に合わせた自己改革だけでなく、自社を取り巻く不確実なリスクにも対応しなくてはなりません。

たとえば、2018年の大阪府北部地震や西日本豪雨、台風第19~21号や北海道胆振東部地震、そして、2019年も立て続けに襲来した大型台風などは、まさに予測不可能なリスクと言えます。このような水害の発生リスクや長年指摘されている首都直下型地震や南海トラフ地震の発生といったリスク要因は引き続き増大していくことでしょう。当然ながら、これらは日々の生活だけでなく、ビジネスへも大きな影響を与えることになると想定されます。

日本の多くの中小企業にとって、前述のような自然災害は、事業中断のリスクさえ伴うもの。これに備え、損害保険や共済に加入している事業者は少なくないはずです。

しかし、これまでの保険内容の場合、半数以上が水害(水災)に対応していなかったり、一部しか補償されない場合があるとの指摘もなされています。被災時に重要な役割を果たす損害保険は、被災した事業者の資金確保を通じて、事業継続に寄与するものです。今後を見据えて、リスクに見合ったカバー率の保険を選択することが強く望まれると、「2019年版 中小企業白書」では述べられています。


●BCP対応の一環として災害リスクを考えよう

数年前より大いに語られてきたBCP対応の重要性。ですが、実際はその“入口”とも言えるリスク把握すら大半の企業が行なっておらず、具体的な災害対策に取り組んでいる企業はその半数に満たないことが分かっています。

※「中小企業白書2019年度版」P419 第3-2-24図 「自然災害への備えに具体的に取り組んでいる割合」を加工して作成

グラフを拡大して見る

他方、具体的な対策を実施している企業においては、まだ自社内での対応が過半数を占めているようです。以下のグラフの通り、「特になし(自社のみで対応)」の割合は57.5%と最も高いことがわかります。

しかし同時に、行政機関や取引のある保険会社など、周囲の関係者の支援を受けている例も一定数挙げられています。この背景には、「経営者は忙しく、保険選びやその基礎となるリスク把握については周囲の支援者の手を借りなければ対応しきれない」ということが真っ先に挙げられるでしょう。加えて、近年は「想定外の災害」や「100年に一度の災害」が立て続けに起きるようになっており、「これまでの経験や常識が通用しない」と感じた経営者が外部の知恵を借りる必要性や有用性を認識し始めている、との見方もできそうです。そう考えると、経営者にとって、「手を借りられる、信頼できる支援者」とつながることがこれからのBCP対応の第一歩、と言えるのかもしれません。

※「中小企業白書2019年度版」P426 第3-2-29図 「自然災害への備えを行うに当たって支援を受けた者」を加工して作成

グラフを拡大して見る


●災害時に役立つだけではない! 事例で紐解くBCP対応のメリット

中小企業庁が公開している「中小企業BCP策定運用指針」によると、「BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと
(参照:中小企業BCP策定運用指針)」
とあります。

他方、「2019年版 中小企業白書」では、そんなBCPを策定している中小企業や小規模事業所は一部にとどまっており、今後策定する予定の企業もさほど多くはない、と指摘しています。ただ、「BCPだ」とまでは言えなくとも、自然災害の発生時における自社や他社への影響と対策を検討している事業者は一定数存在するようです。

では、実際にBCPを行なっている企業はどのようなメリットを感じているのでしょうか?

東日本大震災での被災を契機に、全社的に災害対策の取り組みを充実させた企業」の例は、示唆に富んでいます。1912年に創業した同社は、石巻市中心部の本店と石巻港に近い門脇工場の2か所におもな製造拠点を有し、直営店も数か所を構えていたそうです。しかし東日本大震災に伴い被災。復旧作業に多くの時間を要したことから、BCPの策定に取り組んだとあります。被災時の対応を従業員全員にしっかりと伝えて職場環境を整備。この取り組みがきっかけで「人命を最優先する企業」というイメージが口コミで広がり、新卒採用におけるエントリーが増加するという好影響にもつながっているとか。つまり、BCPは万が一の場面以外でも価値ある取り組みと言えそうです。
(2019年版 中小企業白書「事例 3-2-2 株式会社白謙蒲鉾店」を加工して掲載)

事前対策の実施により、地震の被害を最小限に抑えた企業」の事例も、東日本大震災がきっかけでBCPに取り組んだ事例です。こちらは、「災害時にも部品の供給責任を果たす必要性を感じ、取引先からの要望もあって」とのことですが、生産管理を最適化し、他社で代替生産が難しい部品の生産量を維持して在庫を確保した結果、別の災害時に顧客への納品を止めずに乗り越えられたそうです。また、「事前に取引先の連絡窓口や連絡書式のひな形などを整備していたため、地震発生後、早期に関係企業等に第一報を送ることができ、信頼の獲得にもつながった」と紹介されています。(2019年版 中小企業白書「事例 3-2-3 株式会社寺方工作所」を加工して掲載)

BCP対応は、自社固有のリスクを棚卸しするほか、社会環境などを考慮したり、「もし、こうなったら」という想像力を働かせることで精度を高めていくものです。時間もかかる上、その性質上「経営者ひとりで策定する」というのは現実的ではありません。

加えて、最近「中小企業の経営者が高齢化している」との問題意識が共有されるようになったことから、経営者が病気やケガ、介護や認知症になった場合のことも想定してBCP対応する必要がある、との意見も聞かれるようになりました。このことからもわかる通り、従業員と経営者が一緒になって練り上げてこそ、BCPは実践可能かつ必要十分な内容になると言えます。

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中小企業白書の読み方のまとめ

全553ページで構成されている「2019年版 中小企業白書」。冒頭でも触れた通り、注目すべきトレンドへの考察やコラムも充実しているので「ビジネス書」として読み進めることもできそうです。

特に今回は、事業承継や勇退準備、防災・減災対策といった今日の中小企業が避けては通れないテーマが深く紹介されており、読後の気づきも多いはずです。ふんだんに示されているデータをもとに、自社が同(類似)業種の標準と比べてどのような位置づけになるのかを見通せば、事業改善へのヒントが得られたり、自社のベンチマークを設定することもできるでしょう。事例を読みながら、「うちの会社と状況が似ている…」と共感したり、「これはマネしたい」と感じる部分があるかもしれません。

2015年からは「小規模企業白書」も発行されており、こちらには個人事業主にも役立つヒントが数多く掲載されています。すでに個人事業主として活躍されているひとだけでなく、これから独立しようと計画しているひとにも示唆に富む一冊です。

また、アクサ生命でも、商工会議所会員企業を中心に6,622名の中小企業経営者に対面調査してまとめた「社長さん白書2019」を公開しています。こちらもリアルな経営者たちの声が詰まっているので、ぜひご覧ください。さらに今年は、経営者の配偶者を対象にデジタル調査した「社長の奥さま白書2019」もご用意しました。「普段聞きづらいけど、どう考えているんだろう?」という経営者のみなさんはこちらもぜひご覧ください。

(調査期間:「社長さん白書」2019年5月~8月、「社長の奥さま白書」2019年5月~7月)。

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監修
アクサ生命 デジタル&カスタマーエクスペリエンス部 デジタルマーケティング課
オンライン・プレゼンス・マネージャー 保栖 文博
(中小企業診断士、AFP、2級FP技能士)

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