2023年04月02日 | 会社経営のこと -Business-
本稿では、神奈川大学 経営学部の4名と、愛知県南部にホンダ系自動車ディーラーを展開する「株式会社ホンダカーズ愛知南(愛知・蒲郡市)」の山本昌宏代表とのオンラインでの交流の様子をレポートにしてお伝えします。
株式会社ホンダカーズ愛知南の前身は、1948年6月、タイヤ再生事業を主とする有限会社として誕生しました。その後、自動車部門設立。1975年には、有限会社蒲郡ホンダ販売と社名を変更し、以来ずっと地域に密着しながらホンダ車の販売、車検・点検・整備・修理をはじめ、ドライバーや同乗者、そして地域に暮らす人々など、自動車に関わるすべてのひとの安全と安心のためのサービスを提供し続けています。
今日、日本の基幹産業である自動車産業は、大変革期の真っただ中にあります。人口減少や所有の仕方の変化、自動車の役割・機能の革新など、ビジネス環境が変わる中で、多くの自動車ディーラーは、「どうやって自動車を販売するか?」という難問に直面していると言われています。
そうした中で、ホンダカーズ愛知南が2013年から始めたのは、社内コミュケーション促進から社員満足度を向上させることを目的にした「ES(エンプロイーサティスファクション)委員会」の設立でした。代表には、「社員の満足度向上がお客さまとの応対でも良い影響を生み、結果的に顧客満足度向上につながる」との確信があったそうで、各種親睦会等に必要な活動費用は全額を会社が負担しているとのこと。また、若手社員を中心に社員自らが「なりたい社員像」を挙げて策定した行動規範を採用し、人事評価もこれを基準に行うという、ユニークかつ透明性の高い人事制度も実践しています。
このような取り組みが評価されるのはもっともなこと。2018~2023年の6年連続で「健康経営優良法人(中小規模)」に認定されているほか、本部である本田技研工業株式会社が定めたさまざまな審査基準をクリアした法人や拠点、営業スタッフやサービススタッフらに贈られる「ホンダカーズアワード」の連続受賞や、同「社員活性度調査」で常に上位入賞し続けるといった成果も挙げています。さらに、全国のホンダ系ディーラー内の「顧客満足度調査」では、2018年から2021年まで1位に輝くほど。
そんなホンダカーズ愛知南の代表とお話しができれば、これから就職先を探す学生たちは「働くことへの新たな気づきが得られるはず」と、訪問を打診したところ、快く迎え入れてくださいました。
今回参加したのは、自動車産業に関心を寄せる4人の学生たち。「もしこの業界に就職したら将来どうなるのか?」が気になる様子で、対話が始まるや、次々と鋭い質問が飛び出しました。
最初の質問は、「健康経営」の実践が採用や職場定着率に及ぼす影響について。
「自動車整備士業界の有効求人倍率は、近年、全職種に比べて4倍以上高くなっている」という調査発表をもとに、「データから、早期離職が多い職場なのだと読み取れる。『健康経営』を実践しているホンダカーズ愛知南ではどうか?」という内容です。
山本代表は、近年の自動車は飛躍的に進化しており整備の難易度が高まっていることなどに言及しつつ、
「私たちが『健康経営』に取り組み始めたのは、この言葉が世に出る前のこと。『社員みんなにとって、不満を感じることなく、働きがいを感じながら過ごせる会社はいかにして作れるか?』という問題意識のもと、さまざまな取り組みを実践してきた。そのための情報収集を行う中で、『健康経営』を知り、2018年に初めて『健康経営優良法人』を申請し、認定を受けるに至った」と、「健康経営」を始めたきっかけを伝えた上で、
「『健康経営優良法人』の認定やホンダ系ディーラー内での『社員活性度調査』において良い結果が出たことは素直に嬉しく思っている。そして、その結果だけでなく、私たちの仲間になった新入社員たちの3年以内の離職率が『0(ゼロ)%』を記録しているのは誇らしいことだ。最近では、いくつかの会社の内定を受けたひとが、『あの会社は良いらしいよ』という周囲の後押しを受けて入社を決めてくれている」と、「健康経営」を実践していることで起こっている好影響について語ってくれました。
次に挙がったのが、「健康経営」で従業員満足度が上がったとして、それがビジネスにどんな波及効果をもたらすか?という質問です。
山本代表は、ホンダカーズ愛知南がどのように評価されて全国のホンダ系ディーラーの中で4年連続「CS(カスタマーサティスファクション:顧客満足度)クラスNo.1」になったかを説明した上で、
「自動車を買おうとしたら、ディーラーを訪れて直接購入するのが当たり前だったが、これからはオンライン購入やサブスクリプション契約といった選択肢を利用するひとも増えると思う。ただ、そうだとしても、車検や修理が必要になれば来店の機会はできるはず。
その時、訪れる店舗を選ぶ基準は、これまで店舗に訪れたことがあるお客さまたちが“評価・採点”したCSのポイントになると想像できる。実際に、最近はCSのポイントに注目するお客さまが増えてきたと感じる」とし、
「数あるホンダ系ディーラーの中でも『愛知南』を選んでもらうにはどうするべきか?と考えたなら、やはり、自分たちの良さをどんどん表に出していかなければならない。100%オーナー会社である『愛知南』の強みは、長く同じひとが社長であり続けているので、一貫性を持った方針を進め、組織文化を定着させやすいことだと考える」と続け、
「たとえば、この対話は大学の春休み期間中に行っているが、休みを返上してでも集まってくれたのは、ゼミの教授に言われたからだけでなく、『休みでも自主的に学んでみよう』という意欲が自発的に湧いてきているからだと思う。だから、いい時間を過ごせている。
会社においても同じことで、トップダウンで物事を決めて社員はただ取り組むだけとなると『やらされている』と感じ、結果的に良いパフォーマンスには絶対に結びつかないものだ。『愛知南』には、働きやすい雰囲気や環境があるから、お客さまのためを想って社員それぞれ気持ち良く仕事をしてくれているのだろうし、その空気感がお客さまにも伝わって、ますます高評価につながっていくのだと思う。また、そうなってほしいという想いも込めて『健康経営』に取り組んでいる」と、答えました。
実際に、愛知県内のメーカー別販売シェアでも、県内のホンダ車の販売台数でも、ホンダカーズ愛知南の存在感は圧倒的とのこと。従業員がイキイキと働く職場の雰囲気が顧客にも伝わり、良い成果に結びついているのだと想像できます。
中には、「従業員満足度が高いことが本当に顧客満足度の向上につながっているのか?」と、疑問に思う意見もあるかもしれません。「むしろ、値引きやおまけを付けてくれた方が顧客は喜ぶのではないか?」と考える向きもあるでしょう。
しかし、「値段だけに惹かれてきたお客さまは、また値段が理由でどこか別のところに行ってしまう」と、山本代表。
「たとえば、ある車が150万円だったとして、148万円に値引きしてもそれほど大きな差はないと言える。ましてや車なので、金額にばかりこだわってはいられない。保管場所やローンの返済計画など、解決すべき問題はいくつもあるものだ。
それなら、『これで大丈夫そうだ!安心して買えた』という体験をしてもらうべく応対する方が意味もあるはず。そう考えて丁寧なサポートをしていると、お客さまもだんだん値段のことが気にならなくなってしまうそうだ。会社としては、そうした良い顧客体験をもたらすことができる人材になるよう、研修などを通して社員のレベルアップを支えている」と、語りました。
さらに、「長く地域で商売をさせてもらっている経営者として大切に思っているのは、社員が休日に友人とカフェやレストランでおしゃべりをしている最中に、『そういえば今どこに勤めているの?』という話題になった時、『ホンダカーズ愛知南だよ』という言葉がきっかけになって、『ああ!あそこ良い会社だよね!』と言われる会社を作ること。
それが社員70名超の会社の経営者としての私の想いであり、そのためには地域にも貢献しなければいけないし、会社の有り様をきちんと発信をしていかなければいけないと思っている」と、力を込めました。
次に出た質問が、「健康経営」の進め方についてです。
社員に向けて、基本となる健康診断の受診はもちろん、30歳を過ぎたら全員が人間ドック、再検査が必要な場合は再診を促すといった後押しのほか、ひとと接する機会が多い職場ということを踏まえてインフルエンザ予防接種を全額会社負担にしているという同社ですが、「個人の権利に関わる部分は慎重にしている」と、山本代表。
たとえば喫煙に関しては、「禁煙運動まで踏み込みすぎるわけにはいかない反面、お客さまと対面する時に不愉快な思いをさせてはいけないという考えもある。そこで、時間を定めて禁煙状態を作り、禁煙外来に通いたいひとには全額会社負担という形でサポートしている」と、教えてくれました。
一方、体の健康と同じく心の健康も極めて大切だと考え、ストレスチェックも実施しているとのこと。
「今回の結果では、仕事への悩みは非常に少ないが、それぞれ家庭での悩みを抱えていることがわかった。そこで、市役所に協力を求めて介護についての勉強会を実施した。来年度は金融・資産管理の勉強会を実施する予定でいる。そうした機会を通じて、プライベートも安心できるように環境を整えていきたい」と、新たな構想も明かしてくれました。
心の健康は学生たちにとっても注目のテーマとのこと。4人は、現役大学生185名に行った健康に関するアンケートの結果をもとにした考察と、それを踏まえた「メタバースを利用した『健康経営』の取り組み」について発表しました。
大学や行政が行った学生のメンタルヘルスに関する調査結果を紐解くと、大学生の不安や悩みの現状は深刻で、希望の就職先や進学先に向かって頑張ったひとたちが精神的に参ってしまうことも少なくないとわかっています。
大学側は解決策としてカウンセリングを受けられる環境を整えており、それ利用したひとの満足度は高いと言われているものの、「カウンセリングを受けたことがないひとの方が多い」というのが、現状だとか。
これを解消するための手段として提案されたのが、「メタバースで健康を感じるアプリ」です。
アプリ内でアバターを作成し、所定の情報を入力後、スマートウォッチやスマートフォンを連携させて生体データを計測。「睡眠時間が少ない場合はアバターが疲れた態度をとる、規則正しい生活を送っている場合は元気そうな状態になる」という表示を通じて、自分の健康状態を把握するのが基本のねらいとなっています。加えて、必要な改善策の提案や「その改善策を体験できるリアル店舗のサービスも示す」とのこと。
さらに、「お互いの顔が見えないからこそ気兼ねなく何でも相談できる」という意見を反映した「アバターを利用したメタバース上のオンラインカウンセリングルーム」は、心理的なハードルを感じることなくカウンセリングを受けられるよう配慮された、練られた設計になっています。
学生たちは、「アプリ活用によって、大学側は『健康経営』に取り組んでいることを外部にアピールでき、学生と教員がアプリを使用することで共に健康を保つことが可能になるのでは」と、期待と見通しを語りました。
発表後、山本代表は、「学生らしい発想も加わった素敵なアプリだと思う」と驚いた表情に。
「若手社員たちを見ていても、アバターを介して面談した場合のメリットが想像できる。面談日を予約できる機能などが追加されるともっと利用しやすくなりそうだ。
社会人になると定期的に上司と面談することになると思うが、その前に面談の経験を積み、自分が言いたいことをきちんと主張できるようになるのはとても大切だと考える。
学生は対面カウンセリングに気後れするとのことだったが、社会人だって『直属の上司に言いたいけれど、言えないことがある』と感じることもある。そうしたことを想定して、私たちの場合はあえて直属ではない上司を面談担当にして不満や懸念を口にしやすくし、問題解決につながるよう工夫している。学生にとっても、今回の提案してくれたアバターを活用するといった取り組みは必要だと思う」と感想を伝えました。
ここまで、「健康経営」をテーマに、「働くこと」や「理想の職場」などについて意見を交わしてきた山本代表と学生たち。では、実際に社会に出て「自分らしい働き方」を実践することは可能なのでしょうか?
戸惑いつつも、「自分の興味があることを仕事にしたいと思うし、それなら能動的になれると思う」、「人間関係がうまくいっている会社でなら、自分のパフォーマンスを発揮しやすいのではないか」と考えているという学生たちに対し、「皆さんはきっと、『働く』というのはどちらかというと『辛いこと』と感じているのかもしれない」と、山本代表。
「皆さんは20年くらい生きてきた中で、ご両親や周囲のひとからの教えや経験を通して成長し、それぞれの今が出来上がっている。この先の経験によってまたどんどん成長していくことになるだろう。その中で、給与をもらって積む経験――仕事は、決して楽ではないとは思う。働くことは確かに辛いと思うし、そうした経験がないと成長しない部分もあるかもしれない。
しかし、お客さまに認められたり、誰かに必要とされることで成長を実感したり、喜びを感じたりすることもきっとある。経営者としては、そういう実感ができる機会を創出していかなければならない、と常に考えてきた。
誰でも出来なかったことが出来るようになれば嬉しいし、『出来るようになったね!』と誰かに言われるとより嬉しいものだ。そういうことを示して、少しずつステップが上がるようにしていくのは経営者の役割。みなさんはぜひ、進化する喜びを求めて仕事に向き合ってほしい」と、アドバイスを送りました。
最後に山本代表は、
「社会人になると、職場のひとと関わる時間は家族と一緒に過ごすよりも長くなる。そこで人間関係がうまくいかなかったら、やはりとても辛いものだ。自分も本音を言って、相手からの本音も受け止める、そんな関係性が必要だ。『何を考えているかわからない』となると、思わぬ方向に物事が進むこともある。もちろん、先輩たちはそれを修正してあげるように頑張ってくれるとは思うが、発信しながら受信すること、とにかくコミュニケーションを取れる関係を作りながら仕事をしていくのが一番大事だ。
そして、最後は自分で判断して、決断していかなければならない。そのためには、一生懸命に勉強して、自分のやりたいことをどんどん進めるべきだ。ぜひ頑張って、前に進んでいってほしい!」と、学生たちにエールを送りました。
およそ2時間の白熱の対話を終え、学生はそれぞれ次のような感想を述べ、会を締め括りました。
「ボランティアや交通安全に関する活動などを通して地域に密着していること、そして、体の健康だけでなくストレスチェックを通して心の健康もマネジメントしていることが一番心に響いた」(佐藤)
「社員同士のコミュニケーションを活発にする活動の内容を聞いて、楽しげな雰囲気が伝わってきた。自動車関連の会社のイメージがいい意味で覆され、『そんな環境があるのか!』という発見ができた。最後に、『経営するとは?』という質問をしたが、『会社はやはり、働いて利益を生み出す社員みんなのものだ。だから、きちんと利益を出し、その頑張って得た成果を分かち合えるようにすることがまずは大切だ。そして、税金を納めることで社会に貢献すること。これが経営者の役割だ』とおっしゃっていたのが印象的だった」(原田)
「お話しを聞いていて、山本代表のもとで働けたらすごく幸せだろうと感じた。自分の想像していた“会社”のイメージをぶち壊してくれるようなお話だった」(川崎)
「身近に中小企業の経営者がいて、“中小企業の社長は怖い存在”という先入観があったが、お話を聞き、社員の意見をとても大事にしておられると感じた。きっと風通しのいい会社なのだと思うし、『将来こんな会社で働きたい、こんな上司のもとで経験を積みたい』という理想像が見えた気がした。今後の就職先選びの参考になりそうだ」(市川)
【編集後記】
リモートながら、お互いの熱意が共鳴し合う活気ある面談になりました。あらかじめお渡ししていた学生からの想定質問すべてに回答を用意し、たくさんの資料も揃えて臨んでくださった代表。その誠実な対応はもちろん、用意した回答を後日ご提供いただけたことにも驚きとありがたさを感じました。
難しい内容を話す際、例を交えながら学生たちがイメージしやすいように配慮して語りかける様子からは“人生の後輩”への愛情が伝わってきました。
アクサ生命が提唱する『健康経営アクサ式』は、通常の健康経営の範囲である健康管理・健康増進や心の健康だけではなく、夢や生きがいがあり、自分の居場所を感じられる「社会的な健康」まで含めた「人の健康」、あるいは「企業の健康」といった「トータルな健康」を実現することを目指し、従業員が幸せに活き活きと働くことができ、企業の永続的な発展につなげる取り組みです。アクサ生命では、この取り組みを応援し、成功に向けたお手伝いを続けてきました。
「興味はあるけれど具体的にどう取り組めばいいかわからない」「自分たちで取り組んでみたものの、行き詰まっている」といったみなさまも、ぜひお気軽にご相談ください!
「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。
【関連リンク】
・健康経営アクサ式 - みんなと会社の未来を健康に。 | アクサ生命保険株式会社 (axa.co.jp)
・「健康経営アクサ式」に関するよくある質問はこちらから
AXA-A2-2303-2181/C0T
あなたの会社のさまざまな課題に専門スタッフがお応えし、「100年企業」を目指すためのサポートをいたします。
アクサ生命の商品・サービスについてはこちらの公式サイトからご覧ください。
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