中小企業の海外進出におけるチャンスとリスク(後編) ~「安全配慮義務」を知ってますか?

#会社経営 #今できること #保険 #仕事

近年の社会状況の著しい変化を受けて、国内の中小企業が海外進出を果たす例が増えているようです。ただ、それと同時に、「知っていれば防げたはずのリスク」や、場合によっては中長期に及ぶリスクに対しての備えが必ずしも十分にできておらず、思わぬリスクを抱えてしまうケースもある、との指摘が…。

ここでは、前編の記事を受けて、中小企業が海外進出する際にこそ対策を怠るわけにはいかない「企業の安全配慮義務」について、1959年の誕生以来、全世界でお客さま・パートナーに世界中の緊急事態のアシスタンスサービスを提供しているアクサ・アシスタンス・ジャパン株式会社の大谷淳氏の話を交えながらご紹介します。


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海外でも企業は従業員の安全配慮義務を負う

企業は、従業員に対して、想定しうるあらゆるリスクを排除するよう取り組み、職場環境を安全に保つよう義務付けられています。しかし、海外出張の際などには、「海外旅行感覚で送り出す」企業や「リスク対策は必要だと知っていても手をこまねいているだけ」という企業も少なくないとか―。

――海外進出するにあたって「日本では想像もつかないリスクへの対応」にはどのようなものが挙げられるでしょうか?

企業に気を付けていただきたいのは、「安全・税金・法律」の3つです。個人単位で見ると、「安全(セキュリティ対策)・安心(医療・健康対策)・子女教育(英語と学力維持対策)」が挙げられます。

まず、会社単位で考えるべき3つをより詳しく見ていきましょう。

●安全
・出張者、赴任者の居場所を把握:万が一の事態が発生し、日本本社側が居場所を把握していないと、「安全配慮義務違反」として会社の責任が問われるおそれがある。
・労災保険の特別加入の検討:たとえ短期間でも会社の命令で渡航した場合、「海外派遣者特別加入制度」の申し込みをしないと、海外での労災事故の補償がおりない。

●税金
・滞在日数の把握:相手国の滞在期間が183日を超えると相手国での個人所得の申告・納税義務が生じる。
・PE(恒久的施設)認定の確認:業務内容次第では、相手国での法人税が課税される可能性がある。
・滞在中の費用負担:現地の教育や研修のために日本本社の社員を出張させていたとして、滞在中の費用を日本が負担しているとなると「国外関連者への寄付金」とみなされ、損金不算入になるおそれがある。

●法律
・海外進出前にJETRO等で、進出先の法律についてしっかり確認を。特に、新興国では改正の頻度が高い。

中小企業の場合、従業員ではなく社長自らが海外出張に出向くことも考えられます。この場合、社長に“もしものこと”があると、銀行からの融資など資金繰りの問題が起こることにもなりかねません。だからこそ、最低でも「どの便を利用し、どこに宿泊し、ホテルの電話番号は何番で、いつどこを訪問する予定か?」をリストアップして備えておくべきだとアドバイスしています。小学校の「遠足のしおり」のようなものを作るイメージですね。

また、個人単位のリスクへの対処でも、キーワードになるのが「安全配慮義務」です。企業は、従業員が働くすべての場所で安全配慮を行なう義務(安全配慮義務)を負っており、当然、日本国内だけではなく、海外にいる従業員に対しても同様の配慮をしなければなりません。

そのため、中小企業が海外進出する際、「安全(セキュリティ対策)と安心(医療・健康対策)といった個人単位のリスクに会社としても策を講じなければならない」となります。この点を経営陣も従業員もしっかりと理解しておいていただきたいと強く思います。

参考:労働契約法 平成19年法律第128号 平成30年7月6日公布(平成30年法律第71号)改正

海外で安全配慮義務をまっとうする体制は一企業では構築・維持できない

前項では、海外進出のため従業員を海外に派遣する企業は、その従業員に対して24時間365日の「安全配慮義務」を負う、ということを解説しました。しかし、中小企業の場合、大企業に比べると資金やリソースがハードルになって、このことに十分に手が回らないことも考えられるでしょう。では、具体的にどこまでの対応をすればいいのでしょうか?

――企業が負う「安全配慮義務」の範囲はどこまでが挙げられるのでしょうか?

安全配慮義務とは、出張・赴任する社員に「海外旅行保険を持たせて終わり」というわけでは決してありません。事件や事故、テロや伝染病の蔓延など、万が一の時には、責任をもって社員の安全を確保することまでを意味します。

具体的には、大きく次の4つが挙げられます。

・社員の居場所を把握しておく
・国内外の医療・セキュリティ事情に精通している
・海外ですぐに動けるもしくは動かせるネットワークを構築しておく
・上記のネットワークを常にメンテナンスしておく

海外で工場を建てて、その後はほったらかしにする経営者はいないと思います。しかし、社員の安全に関しては、海外旅行保険を持たせて後はほったらかし、という企業は残念ながらたくさんあります。そうした企業の方は、少なくとも出張前に、「この海外旅行保険で何ができて、何ができないのか。海外旅行保険だけで本当にいいのか」を真剣に考えていただきたいです。

ちなみに、企業が自前で先ほど挙げた4つのことにすべて対応できる危機管理体制を構築しようとすると、数千万円以上がかかります。その体制を維持し続けて活用するとなると、とても一企業では無理な話でしょう。だからと言って、「自分たちができる最大限まではやったから…」という話は通りません。安全配慮義務に目をそらしたままで海外進出はしてはいけないものなのです。

そこで、アクサ・アシスタンスでは、世界34拠点に従業員9,000名以上が、テロや戦争、暴動、内乱、大規模自然災害、集団感染病といった「緊急事態」に備え、海外での有事の際や自然災害の発生など、渡航先に留まることが危険と判断された場合、身の安全を確保するための手段を手配するサービスを提供しています。特に日本では、商工会議所とともに、中小企業の挑戦をサポートする必要十分な限定サービスの提供も始めました。

サービスの詳細は、こちらをご覧ください(アクサ・アシスタンス・ジャパンのページに遷移します)。

アクサ・アシスタンス・ジャパンのページへ

安全配慮義務を軽んじると大きなリスクになるおそれも

――お話を聞くと、海外危機対応は時間や経験などお金ではどうにもできない課題である、と感じます。他方、「少しの期間だから、この国は比較的安全だと聞いているし、今までも問題なかったから」と、甘く見てしまう向きもあるかもしれません。

まず、日本は世界で一番安全な国のひとつであり、警察の汚職もなく、町のいたるところに交番が配置されている非常にまれな国である、ということを認識していただきたいです。それだけ安全でも多くのご家庭や企業では個別のセキュリティ会社と契約していますよね。日本国内ですらこれだけ強い危機意識があるのに、なぜ日本以外の国にいるときは、そうしたものが必要ない、と思い込んでしまうのでしょうか?

また、「1週間だから安全だろう」あるいは「1年だから危険かもしれない」と考える企業もあると聞きますが、それはあくまで確率論であって、短い期間だから安全だという保証はどこにもありません。もちろん、どこかの国は危険で、別の国は安全、ということもありません。

よく「新興国はリスクが高くて、先進国は安全」という感覚的な話を聞きますが、これには根拠がないと断言できます。テロや災害、集団感染症といった影響範囲が大きいリスクに目が行きがちですが、短時間のうちに誘拐されたり、事故にあったりする危険はどこででも起こりえます。「何度か行ったけど大丈夫だった」という経験が、リスクを警戒する心の邪魔になることすらあるのです。

リスク対策は、自分が加入している保険でカバーされる内容を把握するところから始まります。もし海外旅行保険に加入しているなら、一度、自分の加入しているものがどんなリスクに対応しているのかしっかりと確認してみてください。きっと「これでは海外進出、海外出張には不十分だ」と気が付くはずです。

――「もしもの時は大使館などが対応してくれるのでは?」という考えもよぎるのですが、これも甘い考えでしょうか?

「大使館などがすべて助けてくれる」との考え方は、他力本願な状態だと言わざるを得ません。大使館でできることできないことはウェブサイトでも公開されていますが、それによると、できることは相談だけ。交渉、保証、金額の立替、捜索、代行、取締、通訳、翻訳などはできないことだとはっきり明記されています。つまり、大使館には相談はできますが、それ以外は何もしてもらえないのです。

また、海外ビジネス情報の提供、中堅・中小企業等の海外展開支援、対日投資の促進などを行なうJETRO(日本貿易振興機構)も、してもらえることは基本的には相談だけです。

いざ何か起きたときには自分で行動する必要があり、企業は事前にそれを準備しておく必要があります。

中小企業が海外進出の課題を超えて一歩を踏み出すには?

ここまでの話を読み進めると、「海外進出は中小企業には越えられない課題が多すぎる」と尻込みしてしまいそうです。しかし、グローバル化が進み、日本に興味を持ちファンになってくれる外国人が増えている今日、やはり挑戦してみたい、と思うだけの魅力が海外市場には広がっています。

――中小企業の海外進出の課題は「安全配慮義務」を全うできる体制が構築できるかどうかにかかっていると言えそうです。課題を解決するためのアドバイスをいただけますか?

訪日外国人旅行客が増える今日は、多くの外国人の方々が日本について情報を発信し、新たなニーズに気付くチャンスも増えています。

中小企業の経営者や従業員にとっては、思っているよりも海外は近くにあり、多くの商機が身近にやってきている状態だ、と言えるでしょう。越境ECを通じて日本にいながら世界とつながることも可能ですし、そこから海外進出のチャンスを拡げることもありえます。このような流れに限らず、日本企業、とりわけ中小企業が海外に行く機会は確実に増えると見込まれます。

その際に考えておくべきことは、「日本の常識は日本だけだ」ということです。そうした大きな決断をする際に「餅は餅屋」ではありませんが、ビジネスに関することはJETROに相談する、安全に関してはアクサ・アシスタンスに相談する、というふうに、専門家の知識を積極的に取り入れ、みなさまの得意分野で世界を相手にご活躍いただきたいです。


 

アクサ・アシスタンス・ジャパンのページへ

追記:
アクサ・アシスタンス・ジャパン株式会社は、2020年3月17日プレスリリースにて、新型コロナウイルスで困難に直面する企業をサポートするため、緊急支援策として『日本への緊急帰国サポート』の提供を発表しました。

今回の未曽有の危機に対応するため、会員企業以外にも年会費なし・事案対応手数料なし(実費自己負担あり)で日本への帰国をサポートします。

「海外危機対策プラン」にご加入いただいている会員企業さまは、自力で帰国手配ができない場合に、セキュリティアドバイザーの判断により、アクサ・アシスタンスの費用負担にて帰国サポートもしくは安全確保措置を提供します(実費自己負担なし)。

詳しくは、アクサ・アシスタンス・ジャパンまでお問い合わせください。

AXA-A2-2004-0156/A6D

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