変額保険とNISA・iDeCoを比較
老後資金の積立にはどっちが向いている?
公開日:2025/11/11


老後資金を準備する方法として「変額個人年金保険」へ加入する方法、「NISA」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を活用して積立運用する方法などが挙げられます。それぞれの特徴を比較しながら、老後資金の積立について考えましょう。
老後資金の不足が心配な人が検討しておきたい3つの選択肢
預貯金や公的年金制度だけでは、老後資金が不足すると思うなら、「変額個人年金保険」「NISA」「iDeCo」の利用を検討しましょう。いずれも時間をかけて運用することで、将来の受取金額を増やせる可能性のある金融商品です。いずれも運用状況によって価格が変動する商品のため元本の保証はありませんが、税制優遇のメリットもあり、老後に向けた資産形成に向いています。
変額個人年金保険とiDeCo、NISAの違い
変額個人年金保険とiDeCo、NISAには、どのような特徴があるのでしょうか。その違いを比較してみましょう。
項目 | 変額個人年金保険 | iDeCo | NISA | |
運用の選択 | 保険会社が用意した特別勘定の中から選択 | 金融機関のiDeCo取扱商品の中から選択 | 金融機関のNISA取扱商品の中から選択 | |
解約 | 可能 ※短期解約では解約控除が差し引かれる | 原則60歳まで不可 | 可能 | |
死亡時の取り扱い | 遺族に死亡保険金が支払われる | 遺族に死亡一時金が支払われる | 相続財産として遺族に残高を引き継ぐ | |
コスト | 開始時 | 口座開設手数料は原則不要 | 加入・移管時手数料が必要 | 不要 |
保有期間中 | 運用管理費用、保険契約管理費が必要 | 事務手数料、資産管理手数料が必要 運用管理費用(信託報酬)が必要 還付金が発生した場合には還付手数料が必要 | 投資信託には運用管理費用(信託報酬)が必要 | |
解約時・受取時 | 短期解約の場合には解約控除が差し引かれる 年金受取時には年金管理費が必要 | 原則、途中解約できない 受取時には給付手数料が必要 | 投資信託などを売却する際に、売却手数料(信託財産留保額)がかかる | |
税制優遇 | 拠出時 | 一般生命保険料控除の対象 | 掛金全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となる | なし |
運用中 | 非課税 | 非課税 | 非課税 | |
受取時 | 一時金として受け取ると一時所得扱いで50万円の控除あり 年金として受け取ると雑所得扱い | 一時金として受け取ると退職所得に該当 年金として受け取ると雑所得(公的年金等控除額適用)に該当 | 非課税(確定申告不要) | |
※2025年7月9日時点での情報を執筆者がまとめたものです。
運用者や資産の引き出しの可否、死亡保険金の有無、コスト、税制優遇においてそれぞれ特徴があります。
死亡・高度障害保障の有無が異なる
変額個人年金保険の被保険者が年金受取開始前に死亡した場合には、死亡給付金(死亡一時金)を受け取れます。死亡給付金には多くの場合、最低保証がありますが保険商品によっては最低保証がないものもあります。
iDeCo(個人型確定拠出年金制度)の加入者が亡くなった場合には、加入者がそれまで拠出・運用した資産の全額を、遺族が死亡一時金として受け取れます。NISA口座の所有者が亡くなった場合には、NISA口座内の資産は相続財産となり、相続人の一般口座もしくは特定口座で引き継ぐことになります。
利用できる税制優遇制度が異なる
変額個人年金保険の保険料は、一般生命保険料控除の対象となります。1年間に支払った生命保険料の金額に応じて、所得税の計算時に最大4万円※1、住民税の計算時に最大2.8万円の控除が受けられます。iDeCoの掛金は全額所得控除になります。掛金の上限額は加入者の職業などによって異なりますが、掛金が全額所得控除できることで、所得税や住民税の負担を減らす効果が大きくなります。NISAでは掛金による所得控除はありません。運用期間中は、3つの制度のいずれも非課税扱いとなるため、複利の効果を最大限に活用できます。
途中解約・引き出しの可否が異なる
変額個人年金保険は途中解約できますが、契約から10年未満に解約すると解約控除が差し引かれて、解約時払いもどし金が少なくなる傾向があります。解約を検討する時には、解約時払いもどし金 の金額や差し引かれる税金の有無について保険会社に確認しましょう。iDeCoは老後に向けた私的年金づくりの制度のため、原則60歳になるまでは資金の引き出しができません。iDeCoでは老後まで使わない資金だけを運用しましょう。一方、NISAは資金の引き出しについての制限がなく、お金が必要になった時にいつでも引き出せます。NISAは教育資金やマイホームの頭金などのライフイベントの資金準備に向いているでしょう。
運用にかかる手間が異なる
変額個人年金保険では、保険料の一部を保険会社が運用しています。日本株式、外国株式、外国債券、バランス型など投資対象ごとに用意された特別勘定から、契約者は1つまたは複数を組み合わせて選択し、選択した特別勘定の運用実績によって、受取金額が変動します。
iDeCoでは、iDeCo用に選別された投資信託を積立購入します。リスクを取りたくない人に向けて預貯金タイプも選択できたり、リスク許容度に応じて運用商品を選ぶことができます。NISAには、つみたて投資枠と成長投資枠があります。つみたて投資枠では投資信託、成長投資枠では投資信託のほか個別株などにも投資できます。選択肢が厳選されて選びやすいのが変額個人年金保険、NISAが投資対象の選択肢が最も多くなっています。
運用にかかる手数料が異なる
変額個人年金保険の場合、契約時に原則手数料はかかりません(※初期費用に代理店手数料が含まれます。)。運用期間中には、資産管理のために「運用管理費用」がかかるほか、保険期間を通じて保険としての機能を維持するための「保険契約管理費」も必要です。iDeCoの場合、どこの金融機関を選んでも、初期費用として「加入時・移管手数料」2,829円(税込)、運用期間中には毎月171円の手数料がかかります。NISAの場合は、加入時や運用期間中、口座の維持管理にかかる手数料はありません。
変額個人年金保険・NISA・iDeCoを比較!それぞれに向いている人の特徴
変額個人年金保険・iDeCo・NISAには、老後資金を積立できる、資産運用の効果に期待できるという共通 点がありますが、比較してみるとそれぞれ異なるメリットやデメリットがあります。上手に使い分けましょう。
保障も準備したい人・運用をプロに任せたい人には変額個人年金保険が向いている
変額個人年金保険のメリットは、資産運用と保障の機能を両方併せ持つところです※2。年金受取開始前に被保険者が亡くなると、運用実績に応じた死亡給付金を家族に遺せます。基本保険金額が最低保証されている※3ため、運用実績が良くないときに亡くなったとしても守られる安心感があります。加入時に希望すれば、より保障を充実させるための特約を付加できる場合もあります。
保障としての機能がある分、保障に対するコストはかかりますが、支払った保険料に応じて「一般生命保険料控除」が利用できるため、所得税や住民税の負担を軽減する効果も期待できます。