知っておきたい「先進医療」と「患者申出療養」

技術も制度も医療の世界は進歩が早い

医療の世界は日進月歩。次々と新しい治療法が開発され、昔は根治が難しかった病気の治療や手術、治療にかかる費用の負担軽減などが実現しています。また、技術だけでなく医療制度も進歩していっています。

からだへの負担軽減も期待できる先進医療とは?

先進医療は、大学病院などで研究・開発されている最先端の高度な医療技術のなかで、厚生労働大臣が安全性と有効性を確保するために基準を定め、認められた技術のことをいいます。「保険診療」と「保険外診療」の併用が認められているので、治療費の一部には、健康保険が適用されます。

先進医療には、「治療」のイメージを変える画期的な技術が多くあります。患者にとって、「自分らしい生活を送る」=QOL(Quality Of Life)の向上という面でも、先進医療は注目されています。

先進医療のおもな特長

  • 痛みが少ない
  • 効果が高い
  • からだへの負担が少ない
  • 回復が早い
  • 難病が治療できる場合もある

先進医療を受けられる病院は限られている

先進医療は、患者が先進医療による治療を希望し、医師が「治療の必要性があり、合理的である」と判断した場合に実施されます。対象となる病気・ケガは、歯に関するもの、循環器や骨・筋肉の病気、がん、遺伝的な病気など幅広く存在します。

先進医療を受けられる病院は限られています。安全に提供されるため、医師の経験年数や人数、看護体制など、施設の要件が技術ごとに決められています。それらの要件を満たした医療機関のみで受けることができます。

がんを治療する先進医療の一例

重粒子線治療

平均費用:3,086,340円(*1)
平均入院期間:12.1日(*1)
施設数:5施設(*2)
対象となる病気:「固形がん」が対象となる。原発巣(がんが発生した臓器)から離れた臓器に転移のない場合に限られる。「固形がん」は、白血病などの血液がんを除くがんを指し、脳や眼など体のいろいろな部位にできる。
治療方法:一般的な放射線治療ではX線やガンマ線を照射するが、この治療法では重粒子線(炭素イオン線)という粒子線を、がん病巣に集中照射する。
メリット:がん病巣に集中して多くの線量を照射できるため、周りの正常な組織へのダメージを小さくすることができる。そのため、副作用を抑えながら高い治療効果が期待できる。

重粒子線治療についてもっと詳しく!

神奈川県内に「i-ROCK(アイロック)」と呼ばれる重粒子線治療施設があります。「i-ROCK」は、平成27年12月に治療が開始された、全国で5か所目の重粒子線治療施設です。世界で初となる、がん専門病院併設型の重粒子線治療施設であり、重粒子線治療が手術や抗がん剤治療などの中で最適な治療法であるかどうかを判断することが可能です。
「神奈川県立がんセンター・重粒子治療施設i-ROCK」について詳しくはこちら

十二種類の腫瘍抗原ペプチドによるテーラーメイドのがんワクチン療法

平均費用:860,875円(*1)
平均入院期間:外来治療(*1)
施設数:7施設(*2)
対象となる病気:ホルモン療法が効かなくなった前立腺がん。ドセタキセルという抗がん剤の治療が適さないことと、特定の白血球の型(HLA-A24陽性)であることが条件となる。
治療方法:体に備わっている、病気に対する防衛機能(免疫機能)を強化することで、がんを治療する。
メリット:化学療法(抗がん剤治療)と違い、副作用が少ないことが大きなメリットとなる。

腹腔鏡下広汎子宮全摘術

平均費用:732,109円(*1)
平均入院期間:12.7日(*1)
施設数:40施設(*2)
対象となる病気:子宮頸がん。その中でも病期がIA2期、IB1期、IIA1期のがんが対象となる。
治療方法:手術は、従来のようにお腹を大きく切り開くことなく行われる。手術部位を確認するため、お腹に小さな穴をあけて「腹腔鏡」という細い管の先にレンズがついた器具を通して実施される。
メリット:傷が小さくて済み、手術後の痛みや感染のリスクが少ないので、手術後の早期回復が見込める。

先進医療とともに知っておきたい「患者申出療養」とは?

2016年4月に新しい制度として「患者申出療養」がスタートしました。患者申出療養とは、患者からの申し出をもとに審査を迅速に行い、身近な医療機関で先進的な治療を受けることができる制度です。

「未承認薬をできるだけ早く保険外併用療養として使いたい」、「先進医療や治験で実施していない医療も迅速に受けたい」。このような患者の思いにこたえるため、「患者申出療養」は創設されています。

メリットとしては、身近な医療機関で、迅速な治療を受けることが可能なことです。先進医療を受けるには、病院の規模や医師の数、治療の実績などの厳しい基準があるため、治療を受けたくても受けられない患者が存在することも事実。患者申出療養を利用することで、今まで治療を受けられなかった困難な病気と闘う患者が、迅速な審査と治療を受けられるようになります。

先進医療と患者申出制度では、審査期間や受けられる技術、実施医療機関に違いがあります。

  • 高額療養費制度の対象となりますが、健康保険制度における自己負担額は年齢や所得によって異なります。

先進医療と患者申出療養は、どちらも高度な技術を受けることができる制度となり、今後、さらなる技術の進歩が期待されています。医療費や安全性などを考慮しながら、自分に合った医療を選択することが大切です。

  • 出典:平成28年1月20日中央社会保険医療協議会総会資料「平成27年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」(平成26年7月1日~平成27年6月30日の実績報告)(「平均費用」の表示単位未満は切捨て)

  • 出典:厚生労働省「先進医療を実施している医療機関の一覧」(平成29年3月10日現在)

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