佐々木俊尚さんが語る、100年時代のお金と豊かさ

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佐々木俊尚さんが語る、100年時代のお金と豊かさ

ITやテクノロジーの進化によって、かつてないスピードで変化を遂げている現代社会。そのスピードに不安や戸惑いを感じている人もいることでしょう。この混迷の時代に、数々の著書でITの進化がもたらす新しい社会やライフスタイルについて発信している、ジャーナリストの佐々木俊尚さん。そんな佐々木さんに、大変化の時代を生きるうえで大切にすべきことを伺いました。

寄らば大樹より、コミュニタイズが人生を豊かにする

――若い頃、キャリアや老後をどう考えていましたか。

毎日新聞の記者時代は、未来のことを何も考えていませんでした。家族的な終身雇用の会社だったので、将来に対する不安はありません。仕事は楽しく、日々、寝食を忘れて事件を追いかけていましたね。エジプトで60人以上の観光客が襲撃されたルクソール事件、ペルー日本大使館公邸占拠事件など、世界を震撼させた事件も担当しました。ただ38歳のとき脳腫瘍が発覚し、3か月会社を休みます。そのとき、仕事で張り詰めていた糸が切れ、初めて自分の行く末を考えました。

このまま会社にいてもあと数年で現場勤めは終わる。でも自分は管理部門の仕事は性に合わず、できれば一生文章を書き続けたい。また以前から興味があったネットやIT分野の仕事もしてみたい。そんな思いがあって、アスキーに転職することにしたんです。当時、終身雇用の大企業から小さな出版社への転職は異例で、周囲からは“頭がおかしくなったのか?”と散々言われました。

――その後、フリーになりますが、収入的な不安はなかったのでしょうか。

独立した2002年前後はパソコン雑誌が山ほどあり、原稿を書いてさえいれば生活できました。でも2008年のリーマンショックで出版不況が訪れ、雑誌が消滅し始めます。大手出版社の友人は、「妻も同じ会社だし、会社がつぶれたらどうしよう」とすごく不安そうでした。

でも自分は連載を10本持っていて、1社、2社がつぶれてもすぐに路頭に迷うことはない。そのとき、“寄らば大樹と思っていても、大樹が倒れてしまえば途端に行き詰まる。自分のように複数の仕事をしていると不安定に見えて、実は色んなところとつながっているから結果的に安定している”と感じました。とはいえ収入は減っていったため、有料メルマガを始め、若い人と会社をつくり、スタートアップに出資をするなど、複数の収入源を確保しました。

――現在、暮らしを楽しくするための共創コミュニティ「SUSONO」などを主催されています。コミュニティ活動に力を入れているのはなぜですか。

2年前に出した『新しいメディアの教科書』という本のなかで、これからはパーソナライズ(個人最適化)より、コミュニタイズ(共同体最適化)が重要だと書きました。メディアの運営においては、個人に合わせた情報を発信するのではなく、読者が仲間や家族などと共有したいと思う、共同体を意識したコンテンツを提供することが大事だということです。

自分にとってより快適な共同体をつくるコミュニタイズは、これからの生き方においても重要です。人は共同体なしに生きていけません。かつては農村社会、戦後は終身雇用の会社がその役割を果たしていましたが、非正規雇用が40%に達した今、会社を基盤とした共同体感覚は消滅しつつあります。一昔前の会社勤めのような同調圧力の高い息苦しさを排除しつつ、いかに新しい共同体の概念を作るか。それが今の社会の最大の課題です。色々な人や場所とつながることで安定的な収入や充実した暮らしを得られた経験から、自分でも新しいコミュニティのあり方を常に模索してきたんです。

自分の場合、メディアへの露出、執筆、出版などの仕事を通した人間関係がありますが、会社を立ち上げてそれらを一つにまとめようとは思いません。プライベートでも山登りの仲間、フェスで年に1回会う仲間、あきる野市の狩猟仲間など、様々な人間関係があります。でも一つに過度に没入せず、適度な距離を保ちつつ、長く関係を維持させたいと考えています。レイヤーごとに切り分けた人間関係を複数持つ。それがこれからの理想的なコミュニティのあり方ではないかと思います。

――幅広い人と多様な接点をもつことが大事なんですね。

自分が知らない視点を持つ人と付き合うことが、人生の幅を広げることになります。そのうえでのキーワードが“移動”です。僕は現在、東京、軽井沢、福井県美浜町での3拠点生活をしています。福井に行けば漁師や農家、地元の郵便局員らとご飯を食べます。

彼らから田舎の生活や抱える問題の話を聞くことで、自分のこれまでの発想にはない様々なことを教わっています。東京には仕事も面白い人もまだ多いので、移住までは考えていません。でも今後、自動運転車が普及すると、移動しながら暮らすことが当たり前になるでしょう。

1億円貯めても不安は消えない。人工知能で投機が成り立たない世界に?

――佐々木さんは100歳まで生きたいですか? 

健康で今のような活動が続けられるならいいですね。僕のライフワークは、インターネットや情報通信テクノロジーの進化が社会や生き方にどのような影響を与えるかを書くこと。このテーマで自分が70歳、80歳になっても書くべきことがあれば、書き続けたいです。

同年代の50代半ばの人たちの多くは、定年をゴールに逃げ切りを考えているようですね。でも人生100年時代では、その先に膨大な長い時間が待っている。退職金と年金で隠遁生活をするのは難しいでしょう。その後の人生を楽しく生きるには、何歳になっても世の中の流れをキャッチアップし続け、何らからの形で社会に貢献し続ける必要があると思います。

――佐々木さんからみて、理想的な生き方をしている先輩世代の方はいますか。

糸井重里さんは、すごく素敵に人生を楽しんでいる気がします。人生を楽しんでいる人というと肉食系の人の名前が挙がることが多いですが、糸井さんはガツガツせず、自然体なところがいい。今は“必死で生き残らなくちゃならない”“このままじゃいけない”といった切迫感をもった人が多く、ホリエモンのようなイノベーティブな人に憧れる人も多い。でも彼のような存在は、目指してなれるものではありません。

僕は平凡な人がそのまま困難な時代を生きて行けるモデルが大切だと思います。糸井さん自身はスーパースターですが、彼は平凡な日常感をもったまま、気張らず色んなことをしています。普通の人にできないことは言いません。“これからの働き方”についてトークしたときも“べつに普通にやっていればいい”とおっしゃっていました。このようなゆるさ、おだやかさは、これからの時代に大事だと思います。

――人生100年時代は、老後のお金に対する不安を持つ人も多いようです。

今後、十分な退職金が期待できず、年金もたいしてもらえないとなれば心配するのは分かります。でもお金を1億円貯めれば安心かというと、そんなことはない。僕は30代、40代で5億、10億円というお金を手にした起業家を何人も知っています。でも彼らを見ていて、みなが幸せとは思えません。

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンというアメリカの心理学者の研究によると、人の幸福度は年収7万5,000ドル(約850万円)までは収入に比例するけれど、それ以上になると比例しなくなるそうです。富は一定額を超えると、幸福とは関係なくなってくるのです。

むしろお金を追いかけると目的と手段が逆転し、本当に大切なものを見失い、かえって不幸になってしまうことがあります。だから老後のために無理してお金を貯めるより、長いスパンで無理せず、細々と稼ぎ続けられる状態を目指したほうがいい。いざとなったときに助けてくれる人間関係を築くなど、セーフティーネットを自分なりに用意することも大事です。

――お金さえあれば安心、と考える人が投機に走る場合もあります。

バブル以降、日本人は投機に目を奪われ過ぎています。日本人は新しいテクノロジーを妙に怖がるわりに、ビットコインバブルが一番加熱したのが日本でした。いい会社に投資し、その会社の成長を応援する。そんな健全な株式投資に戻すべきです。そこで興味深いのが、ヘッジファンドがAIをどんどん駆使しだすと、健全なマネー市場に戻っていく可能性があることです。

仮にヘッジファンドが独占的に超強力なAI を駆使して投機マネーを独占するようになれば、ディストピアの未来が待ち受けているでしょう。しかしAIの研究者や技術者はオープンソース的なマインドを持っているので、そのアプローチや技術はすぐに世界中で共有されます。すべてのヘッジファンドが同じレベルの性能のAIを使うようになると、どのファンドも同じような判断になってしまい、他社に抜きん出ることができなくなって、投機という行為自体が成立しなくなります。投機をする人がいなくなり、金融市場が実態経済に限りなく近づいていくかもしれないのです。

そして、投資した会社と一緒に自分も成長していきたい、というかつてあった投資モデルも見直されて欲しいですね。今、クラウドファンディングなどで上場間もない小さい会社に投資する試みなどもあります。そういったモデルも含めて、支持する会社のビジネスを応援していくことが新しい個人の投資のあり方として、確立されるべきなのではないかと思っています。 

複業時代は人間関係を大切に、トライ&エラーを繰り返すことが大切

――これからの働き方はどうなっていくと思いますか?

今後、一つの仕事だけで生活できる人は、一部の優秀な人を除いて少なくなっていくでしょう。非正規雇用化が進み、複業も一般化し、多くの人が一人で色んな仕事をこなすようになると思います。よく「AIでこの仕事がなくなる」なんて記事がありますが、正解は誰にも分かりません。であれば、どんな状況になっても柔軟に対応できるよう、常にフリーハンドな状態でいることが大事です。

今、ソフトウェアの開発では、最初から完璧な計画を立てず、スピーディーにつくって改良を重ねるアジャイル型が主流です。仕事においても、何にでもフットワーク軽く挑戦し、違うと思えばすぐ撤収する。逆にすぐ収益にはならなくても、長期で取り組めば自分の評価につながると思ったものは続ける。そうやってトライ&エラーを続けた人こそ、生き残れる可能性は高いでしょう。

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――今後はスキルや知識もすぐに陳腐化していきそうですね。

これからの社会は、あらゆるものがIT化され、AIで自動化されていきます。それでも最後に人間に残るのは、コミュニケーションとクオリアだと思います。クオリアとは、主観的に体験するさまざまな質感のことです。例えば、「夕焼けの赤い感じ」「虫歯のズキズキ痛む感じ」「面白い映画を見てワクワクする感じ」など、AIはこのようなクオリアを感じることはできません。

またロボットは、おじいちゃんをお風呂にいれることはできても、背中をさすって「大丈夫だよ」と安心させることはできません。夕日を見て「きれい」、ごちそうを食べて「おいしい」と一緒に共感することもできない。このような人とのコミュニケーションとクオリアは、人間ならではのものです。

このコミュニケーションとクオリアを軸にした仕事は残るし、この二つこそ100年時代の人生を彩るものになるでしょう。そういった意味で、これからの時代、豊かな人生を送るうえで最も大事なものは人間関係です。SNSが「友達」とその行動を可視化するように、どういう人とつきあっているかが、その人のパーソナリティを定義づけ、ときにはその人の価値となります。よい人間関係をもつ人には、さらに素敵な新しい仲間が増えていき、その差は年をとるほど広がっていきます。だから会社にいても、若いうちから広い人間関係の構築を意識すべきでしょう。

――佐々木さんはこれからの時代、ストック型教養が重要だとも訴えていますね。

今の世の中は情報に溢れ、あまりにも複雑できちんと認識することが難しくなっています。例えば、絶対的な悪がいて、その人間を倒せば世の中が良くなる、といった単純な社会であれば自分の目標が定めやすいですが、そうではない。自分らしく、よりよく生きていくためには、世の中の複雑な情報を自分独自のフィルターを通して認識する必要があります。そのためには、どういう視点で世の中を見るか、といった確固たる自分の世界観を持つ必要があります。

今、SNSを始めとするネットにあふれている情報はフロー型の情報で、これらをいくら読んでも自分のなかに残りません。どういう視点で情報を得るか、自分でフィルターを設け世界観を構築することが重要です。そのためには哲学書や歴史書などの人文書を読んで、人類が長い歴史のなかで積み重ねてきたストック型の情報を自分のなかに蓄積させる必要があります。長いスパンで、普遍的な視点から、自分は人生をどう生きたいのかを考える。変化の激しい時代だからこそ、すぐに答えは出なくても、それを問い続けることが大切なのです。

佐々木俊尚
1961年、兵庫県生まれ。1988年に毎日新聞社に入社し、12年あまり事件記者として働く。1999年にアスキーに移籍し、「月刊アスキー編集部」でデスクを務める。2003年に独立してフリージャーナリストに。『そして、暮らしは共同体になる。』『レイヤー化する世界』『広く弱くつながって生きる』『家めしこそ、最高のごちそうである。』など著書多数。

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