「もしもの時のタンス預金」にちょうどいい金額は?~火事・災害、相続や増税時に気をつけたいポイント整理~

#お金 #税金

お金のつかいみちはさまざまに挙げられますが、不確実性が高まる時代だからこそ「貯蓄に回す」というひとは多いことでしょう。貯蓄の方法として真っ先に思い浮かぶのは、銀行や信金・信組への預金、または、郵便局に貯金するというものです。

しかし、「いざという時のため」などにある程度まとまったお金を手元に置いておく「タンス預金」をしているひとも少なくないかもしれません。ここでは、そんな「タンス預金」について考えてみましょう。

日本のタンス預金はいくらくらい?

日銀が発表している紙幣流通高や各研究所が発表している情報を紐解くと、2019年1月末の日本のタンス預金は、50兆円を突破したと考えられています。日本の総世帯数は、2019年1月1日時点で5,852万7,117世帯(総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(平成31年1月1日現在) 」)と発表されているので、単純計算すると、1世帯あたり約8.5万円程度の「タンス預金がある」と考えられそうです。

ただし、収入や過去の資産なども含めると、世帯によってその額が大きく変わるのは当然のこと。また、空き巣被害などの心配があるため、「自宅に現金は置かない」とするひともいるはずです。金融のプロたちは、「多くの家庭が災害などの『もしもの時』に備えてある程度のお金を確保しており、また、一部の富裕層がまとまった金額を『タンス預金』として保有していると考えるのが妥当だ」と、指摘します。

では、「もしもの時」の備えとして妥当な金額はいくらくらいなのでしょうか?そして、富裕層が保有していると考えられる「タンス預金」の金額はどの程度なのでしょうか?いくつかのデータや公表数値から見てみましょう。

「もしもの時」のためのタンス預金額はどのくらいが妥当?

災害時、電気やガスといったライフラインが一時的あるいはもう少し長い期間、停まる場合があることはよく知られています。近年は地震や大雨災害等が立て続けに起こったこともあり、そうした局面に遭遇したひとも少なくないかもしれません。

そうなると、電気があって動くATMから現金を引き出すことは難しくなると予測できます。また、キャッシュレス決済をするにしても、機器が動かなかったり、通信が不安定で利用できない場面も想像できます。これらのことを考えると、安心できるある程度の金額を手元に置いておくのは検討に値することだと言えるでしょう。

ただ、冒頭にも述べた通り、あまりに高額だと防犯上の心配も出てくるもの。たとえば、1ヶ月あたりの費目別の支出額を参考に、最低1週間は耐えうる程度の現金を念のため手元に残しておくというのが現実的ではないでしょうか。

その金額を考えるにあたり、総務省統計局が発表している「家計調査報告(家計収支編)2019年(令和元年) 」が参考になりそうです。同家計調査報告によると、2019年の二人以上世帯および単身世帯の消費支出は平均として次のように示されています。

(出典:「家計調査報告(家計収支編)2019年(令和元年) 」より)

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特に以下の2点は生活に欠かせず、かつ、銀行で自動的に引き落としされるよう設定することがない項目と考えられます。

●食料
 毎月平均して二人以上世帯では80,461円、単身世帯では44,263円の支出がある。

●保険医療費
 二人以上世帯では14,010円、単身世帯では7,712円の支出がある。

この食料と保険医療費を足した金額が最低限、毎月現金として必要な金額と仮定すると、二人以上世帯なら94,471円(80,461円+14,010円)、単身世帯なら51,975円(44,263円+7,712円)となります。

ただ、先ほども示した通り、これだけの現金を手元に置いておくのは心配だ、と考えるひとも少なくないと想像できるため、その約1週間分としてそれぞれの金額に1/4(1ヶ月を約4週間として)を乗じた値、つまり、二世帯以上の世帯なら約24,000円、単身世帯なら約13,000円程度を、手元に置く必要最低限のお金として「もしもの時」のために備えとしておく目安の金額と設定してみるのが妥当だと考えられそうです。

加えて、この「タンス預金」は、災害時だけでなく、急な病気の際に地元の診療所やかかりつけ医のところに受診に行く際、手元に現金がなく、かつクレジットカードが使えない場合にも役立つかもしれません。からだがつらいときにATMを探してお金を下ろさないといけない、といった避けたい状況にも対応しやすいでしょう。

そうした突発的な出来事への対応という意味では、ご家庭の状況によって、「小さな子どもがいて急病が心配だから保険医療費はもう少し多めに準備しておこう」などというふうに状況に合わせた見極めも、「もしもの時」のために備えとしておく目安の金額を決める上で重要だと言えます。

地震保険や火災保険で現金はどう扱われる?手元におくメリット・デメリット

大災害時には、物理的なお金の場合、焼失や紛失といった恐れもあります。しかし、居住用の建物と家財を対象にした地震保険では、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・宝石・骨とう、通貨、有価証券(小切手、株券、商品券等)、預貯金証書、印紙、切手、自動車ほか、クレジットカード、プリペイドカード、電子マネーも残念ながら補償されません。
(参考:財務省「地震保険制度の概要」)

他方、空き巣や泥棒に入られて現金が盗難にあった場合、火災保険の盗難補償で20万円までなら補償される場合があるようです。火災保険をはじめとする保険は契約内容によって補償内容が大きく異なります。同時に、「もしもの時」を想定した備えは、ご家庭それぞれの考え方、「何をリスクとして考えてどう対応するか」に大きく左右されるものだと言えます。
(参考:損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況」 、平成29年3月「保険・共済による災害への備えの促進に関する検討会 報告(内閣府防災担当)」 )

これを機会に、「我が家ではどんな状況を『もしもの時』と捉え、それに対してどのくらいお金を確保しておくか?どのように保管しておくか?」を検討してみるのはいかがでしょうか?あわせて、世帯で加入している地震保険や火災保険の内容を改めて確認してみるというのもおすすめです。

「相続税申告漏れ」が富裕層や準富裕層のタンス預金で増える?

さて、世界の富裕層に関してまとめた報告書「World Wealth Report」によると、富裕層とは「100万ドル以上の投資可能な資産を持つ個人」と定義されています。日本円に換算すると、およそ1億円強と仮定できるでしょう。準富裕層については、さまざまな定義がありますが、5,000万円程度の資産を持つひとと考えられそうです。

このような一定以上の資産を持っているひとのうち、高齢者が自宅あるいは銀行などの貸金庫に「タンス預金」をしていたものを、本人の死後“こっそり”子どもや孫が譲り受けるという話がたびたび聞かれるようになっています。

国税庁の発表によると、前述のような申告漏れ相続財産の金額はここ数年増加傾向であり、それに伴う調査件数も増加傾向にあるとのこと。国税庁が2019年12月に発表した「平成30事務年度における相続税の調査等の状況」によると、「実地調査の件数は 12,463 件(前年事務年度 12,576 件)、このうち申告漏れ等の非違*があった件数は 10,684 件(前年事務年度10,521 件)で、非違割合は 85.7%(前年事務年度 83.7%)となっています。

*非違とは:違法、非法の意味。

(出典:国税庁「平成30事務年度における相続税の調査等の状況」)

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正しく相続税の納付をしなかったことが発覚した場合、次のいずれか、あるいは両方のペナルティが課せられることになります。

●追徴課税
納期限内に納税しなかったり、税務署に申告した相続税が実際よりも少なかったことが後から発覚した場合などに、本来納めるべき税金との差額分を算出して納める税

●重加算税
過少な申告を行ない、かつ、それが悪質だと判断された場合、追徴課税に加えて納める税

前出の資料によると、平成30年度の申告漏れ課税価格は 3,538億円(実地調査*1件当たりでは 2,838万円)で、追徴課税は708億円(実地調査1件当たり568万円)にものぼるとか。

*実地調査とは:国税調査のうち、職員が納税義務者の支配・管理する場所(事業所等)等に臨場して質問検査等を行うもの。

「タンス預金は相続対策になる」との話がまれに聞かれますが、税務署は過去の申告内容などから、「このひとの資産はおよそこのくらいだろう」とおおまかに把握していると言われます。そのため、相続税の支払金額と明らかに乖離している場合には調査の対象となり、重加算税や追徴課税を受けることになる、というわけです。つまり、タンス預金は相続対策には絶対になり得ない、と断言できます。


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タンス預金はお金の“価値”が下がる?

タンス預金も、世の中の影響によって価値が上下すること考えられます。より分かりやすくするため、一例を挙げてみましょう。

あるひとが10万円のタンス預金をしていたとします。10万円分のお金は、消費税を含む上限10万円分のものが買えるチカラを持っているわけですが、例えば10%の新たな税が創設されたとすると、1万円余計に払わないと「これまでと同様に10万円分消費できる価値を保てなくなる」となります。これは逆に言うと、「手元にあった10万円について、1万円分は価値が下がった」と言えるでしょう。タンス預金に限らずお金はこのような影響も受ける場合がある、というわけです。

同様に、超低金利でほとんど利子が付かなくなった今日では、金融機関に預貯金していてもタンス預金と変わらない状況であると言えます。そのため、資産運用として、投資信託や株式、債券、変額保険などを活用する、という選択肢を検討する機会が出てきます。


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とはいえ、全額を資産運用に回すとなると、日々の暮らしの資金に影響が生じたり、株価が乱高下することで思わぬ損失を被るリスクも負いかねません。そのためにも、「自分にとって、どの程度の金額が将来にわたる資産形成にふさわしい金額なのか」を見極めて、賢く管理するリテラシーが求められます。


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各種報道では「タンス預金」を消費に回せ、との論調が見受けられますが、「もしもの時の備え」などとしてミクロの視点で考えると必ずしもすぐにそうする必要はないように感じられます。

しかし、お金や状況、自分のライフスタイルや心配事、ライフステージに合わせて、お金とどのように向き合うか考えるべきものだとも言えます。タンス預金もあなたの資産の一部として賢く管理するにはどうすればいいか、じっくり考えてみてはいかがでしょうか?

特に、人生100年時代というこれまでほとんどの人が経験したことがない時代に突入する私たち。どれだけ「こういう道筋で人生を歩みたい」と計画していても、思いもしない出来事が行く手を塞ぐことがあるかもしれません。

だからこそ「何が自分にとっての不安なのか?」「譲れないものはなにか」を明らかにして、それに備えながら、夢や理想をかなえるための「お金の準備の仕方」を実践することは、今後ますます重要になるでしょう。そんな時代に、アクサ生命では、お一人おひとりの人生の道しるべをつくるライフマネジメント®を通じて、お金との付き合い方を一緒に考えるお手伝いをしています。


協力・監修:船場中央税理士法人 税理士 田中豪

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